最終回は、これまでの解説でカバーできなかった導入時点で知っておくべき考慮点を扱う。「分散処理モデルのバリエーション」「セッション管理の違い」「分散型ユーザー認証」の3つだ。

 考慮点は、技術的な注意点だけではない。Webが不得意としてきたサーバー側からブラウザーへの通信や、複数サーバーのデータ統合、IoT対応など、モダンWebの活用範囲の広がりについても解説する。

分散処理のバリエーション(データ取得)

 サーバーから取得するデータの特性によっては、これまで説明した分散処理ではうまく動作しないケースがある。処理モデルをカスタマイズして従来のWebでは難しかった用途を含む幅広い処理に対応できる。

更新頻度が低いデータの処理

 1日に1回程度の更新が行われるデータを扱う場合、Webブラウザーの処理は、サーバーから事前にダウンロードしたデータを用いる。これまで説明してきた分散処理の基本形だ(図1)。例えば、毎日の業務開始時に顧客情報のダウンロードを行い、そのデータを1日利用する運用になる。

図1●分散処理の基本形(データと処理を分散)
図1●分散処理の基本形(データと処理を分散)
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更新頻度が高いデータの処理

 例えば、10分間隔でWebサーバーのデータが更新される場合、分散処理の基本形では、ダウンロード済みのデータを用いるため、古い内容が表示されてしまう。データをWebサーバーに集中させ、 非同期通信で更新頻度に合わせた「定期更新」を行うことでデータを最新の状態に保つことができる(図2)。この場合、データは集中するが、画面の生成などの処理はWebブラウザーに分散しているため、高速な画面遷移などのモダンWebの特長は維持される。

図2●データ集中、処理分散モデル
図2●データ集中、処理分散モデル
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即時更新が必要なデータの処理

 エラーデータなど更新頻度は低いが、更新された場合は即座にWebブラウザーの表示に反映させたい場合も、分散処理の基本形では対応できない。「定期更新」で解決できるが、更新確認のために頻繁に通信する必要があり無駄が多い。