前回は変革に付きものである「抵抗のメカニズム」について解説した。今回はまず「隠れた抵抗」の対処方法を紹介しよう。隠れた抵抗は分かりにくいが、これを見逃すと、プロジェクトは「ちゃぶ台返し」を食らうことになる

 ごく一部のメンバーだけでプロジェクトを立ち上げ、プロジェクトの狙いやゴールについて議論したときのこと。その後、本格的に現状調査を始めようという段階での出来事だ。プロジェクトに新たなコアメンバーのAさんが参画してきた。現状調査を進めるうえで重要なキーパーソンだった。

 Aさんにお会いし、プロジェクトの目的や進め方を時間をかけて説明した。その席でAさんはこんなことを言っていた。

 「うん、まあ、いいんじゃない? でも少しだけ…。まあ、いいのか。うん、いいですよ。頑張ってやっていきましょう!」

 Aさんは少し引っかかるところがありそうだった が、私たちが丁寧な説明をしたかいもあって、納得してくれたようだった。

 新しいコアメンバーがプロジェクトの主旨を理解し、前向きに取り組んでくれることはとても大切だ。だから私はこのとき、ホッと胸をなで下したのを覚えている。

 しかし、これが甘かった。3カ月後、Aさんはこんなことを言っていた。

 「最初からハッキリ言っているが、このプロジェクトはうまくいかない。コンセプトが悪いよ」

 私は正直、困惑した。「最初からハッキリ言っているだって? 最初の説明では納得していたじゃないか」と思ったが、それは後の祭り。最初の段階でAさんの違和感をきちんと拾ってケアできていたら、こんな発言にはならなかっただろう。

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 いつものことだが、この事例は実際に起こったことをそのまま記載している。隠れた抵抗を見逃すとはこういうことだ。

 この程度の微妙な兆候をしっかりと拾ってケアしておかないと、あっと言う間にかたくなな抵抗に変わってしまう。では、どうやって対応すればよいのか。実は抵抗の兆候を拾いまくり、1つずつケアしていくしか手はない。

 ただし、「拾う」と「ケア」にはそれぞれ対応が幾つかある。まず、拾うは大きく2つだ。