干渉を避けるため、無線LAN利用エリアをなるべく少ないAPでカバーするのがよいかというと、それも早計だ。クライアントの数に比べてAPの台数が少ないと処理性能が不足したり、通信速度が遅くなったりする。

 APは機種ごとに、接続できる無線LANクライアント数の上限が規定されている。例えばシスコシステムズの「Cisco Aironet 3600 シリーズ」なら、802.11acで通信する場合のカタログ上のクライアント収容数は50である。これを超える数のクライアントには対応できないと考えるべきだ。

 実用性を考えるなら、収容数はカタログ値の半分くらいまでが目安と考えよう。「実際にラボで動作検証をしてみると、実用的な速度で通信が可能な台数が、どれだけカタログ値のクライアント数に近いかは、メーカーや機種によってかなりばらつきがある」(三井情報ネットワーク技術部第一技術室の嶋貫 有一氏)。特に、家庭向けのAPは、端末数が多い環境での性能低下が激しい傾向があるという。

遅いクライアントにそろう

 広いエリアを少ないAPでカバーしようとすると、「遠くにある、電波が弱いクライアントの速度に、全体の速度がそろってしまう」(ユニアデックス システムマネジメントサービス事業本部の秋谷 昌吾氏)。結果的に、同じAPに接続する近くのクライアントの通信速度も低下する。

 APは、多くのクライアントからの通信を受け付けるものの、通信は同時に1台しかできない。さらに上りと下りでも、同時に通信しない半二重通信をしている。