デジタルマーケティングの将来を考える上で重要なキーワード、第1回の「コンテンツマーケティングとネイティブアド」、第2回の「オムニチャネル」に続き、最後に紹介するのが「アンバサダープログラム」だ。アンバサダーとは英語で「大使」を意味する言葉。従来も広告施策として、有名人を一人から数人「ブランドアンバサダー」として契約して、シンボル的に活用する手法は一般的だった。

 アンバサダーとファンはほぼ同義に思えるかもしれないが、一般的なファンには受け身だったり、周りからはファンには見えない隠れファンも多い。マーケティング活動におけるアンバサダーの対象は、より熱心で積極的な人たちを指す。商品やサービスのファンであることを自ら公言し、周囲にも積極的にお奨めしてファンを増やす。そんな存在のファンを、アンバサダーと呼ぶ。

 アンバサダーとしてのファンを組織化したり、活発に活動できるよう各種の支援を実施したりすることで、マーケティングの成果を出す。この取り組みが「アンバサダープログラム」だ。

一般消費者を自社の「大使」に

 ソーシャルメディアが普及した現在、企業が新たにアンバサダーとしての役割を期待し始めたのが一般の消費者である。ソーシャルメディア時代の変化において最も企業が注目すべき点は、今までメディア力をほとんど持っていなかった一般消費者が、ソーシャルメディアによりメディア化し始めているという点だ。誰でも情報を発信できるようになり、ネットのクチコミを通じて情報が瞬時に広がるようになった。企業とユーザーのコミュニケーション自体は、メルマガやホームページを使っても同様なことが可能だった。企業と消費者のコミュニケーションに加えて、消費者自身がメディア化するようになったことは、ソーシャルメディアの普及で加速した非常に重要な変化だ。

 従来のマスマーケティングでは、企業は顧客を「ターゲット」と呼んだ。戦争用語の「的」として扱っていたわけだ。ソーシャルメディアによりメディア化した顧客がアンバサダーとして活動してくれれば、顧客は企業と一緒に商品やサービスの魅力を拡げてくれる「パートナー」になってくれる可能性がある。