著名サービスの多くがステマに汚染されている可能性がある。それゆえ、ステマ疑惑も後を絶たない
著名サービスの多くがステマに汚染されている可能性がある。それゆえ、ステマ疑惑も後を絶たない
[画像のクリックで拡大表示]

 名だたる企業やサービスでステルスマーケティング、通称ステマが起こっている。

 今回は、楽天市場やWikipediaで発生したステマ事件を取り上げる。また、ステマが問題視され過ぎたことで原因だと思われるハフィントンポスト日本版におけるステマ疑惑事件についても取り上げたい。

2015年にも起こった楽天市場ステマ事件

 2015年にも、大きなステマ事件が起こっていたことをご存じだろうか。楽天市場は名実ともに国内最大級のインターネットモールであり、国内ECサイトの多くが楽天市場に出店している。楽天市場では、売れ筋商品がランキングで表示される。同時に、楽天市場での購入者は買い物した商品を5段階で評価したうえでコメントできる「みんなのレビュー」機能が提供されている。楽天市場は出店数が多いため、各ECサイト自身で楽天市場内で露出を増やす工夫が必要となる。

 おそらく多くのユーザーが店を選ぶときに参考にするのが、「ランキング」だろう。並び替え機能を使うと、「価格が安い」「価格が高い」「新着順」「レビューの数が多い」でソートできるが、多くのユーザーが使うのが「価格が安い」あるいは「レビューの数が多い」ではないだろうか。ランキングやレビュー数は人気のバロメーターであり、同時に評判も知ることができるからだ。

 楽天市場で露出を増やすためには、ランキング上位に上がる、広告などで露出を増やす、値段を安く、レビューを増やす、といった方法がある。このうちレビューを増やす方法は、楽天市場を使ったことがあるユーザーならきっと一度は見かけたことがあるだろう。「レビューをつけてくれたら◯◯プレゼント」「レビューで送料無料」などのインセンティブをつける方法だ。

 楽天市場を運営する楽天は、2014年1月の調査で大阪市のシステム会社ディーシーエイトによるステマを発見している。121の出店者が同社に依頼し、月額8万円で月150件ずつ店舗側に優位な評価を投稿する契約を結んでいたのだ。利用規約で禁じている自作自演であるとして出店者に中止を求めたものの、応じなかった数十店とは出店契約を解除。ディーシーエイトに対して、約1億9800万円の損害賠償を求める訴えを大阪地裁に起こした。同社は、出店者の依頼を受けて、分かっているだけでも11万4327件の架空注文、嘘のクチコミなどを書き込んでいるという。

 そもそもレビューにインセンティブがあるせいで、「到着前ですが期待を込めて」などの、商品レビューとしてはあまり意味のない評価も多く見られる状態となっていた。そこで、楽天はレビューの質を向上するための施策として、同年11月12日より、楽天市場の商品レビューに関するルールを変更。レビューに対するインセンティブを付与するキャンペーンを禁止している。

 現在も、楽天市場の検索窓で「レビュー」と入力すると、「レビューを書いて送料無料」「レビューを書いてプレゼント」「レビュー クーポン」などの候補が多数表示される。これまでレビューでそのようなインセンティブを期待していた利用者が少なくないことがうかがえる(図1)。

図1●楽天市場の検索窓で「レビュー」と入力した様子
図1●楽天市場の検索窓で「レビュー」と入力した様子
出所:楽天市場(http://www.rakuten.co.jp)
[画像のクリックで拡大表示]