前回の本欄『SEの教訓・新人の甘えは許されない』に続き、エムズ・ネット・スクエアの杉村倫代代表取締役と古谷都紀子取締役の体験談を紹介する。
1999年設立の同社は主に若手や中堅に向けてヒューマンスキルの研修を提供している。このため、必要とされる人材像や育成策についてお二人と話すことがある。お二人は若い頃どうであったのかと思い、次の体験はあるかと尋ねてみた。
「SEとして一皮むけた」
「SEとは何かが腹に落ちた」
「仕事のやり方を変えられた」
お二人は20代の時に日本IBMでSEとして働き、30代以降はコンサルティング会社に転じたり、家庭に入って子育てをされたりした。日本IBMを離れて以降、別々の道を歩んでいたが、ある時、別の研修会社で講師として再会した。
顧客に迎合することはするな
今回紹介するのは古谷氏の逸話である。1年半のスクールを卒業し、SEになった古谷氏はある顧客のシステム導入を支援することになった。スクールとは新人研修を指す。
偶然、顧客の担当者も若い女性だったため、仲良くなり、しばしば話をするようになった。ところが、ある時、その顧客を担当していた先輩から注意を受けた。
「顧客に迎合するようなことはしてはいけない」
「我々は出入り業者だということを忘れるな」
一つ目は分からないでもないが二つ目はやや分かりにくい。出入り業者だからこそ、顧客に迎合するのではないか。