新聞やインターネットを眺めていると「何かを続けるための本」と分類できそうなビジネス書の広告が時折目に入る。同じ主題で手を替え品を替え出版されているのは物事の持続がそれだけ難しいからだろう。

 記者や編集者の仕事をして30年経ったがその間やり続けた活動は残念ながら無い。30年間平日は必ず取材をした、30年間毎日執筆した、30年間同じ雑誌に連載を続けた、などと書けると恰好良いのだがそうはいかなかった。

 最も長く続けているのは日経ビジネスオンラインというWebサイトの連載『経営の情識』である。同サイトは4月26日に体裁を一新し、その意図を書いた編集長の一文を読んだところ、「日経ビジネスEXPRESSを発展的に解消するかたちで2006年4月に産声を上げた」という記述があり、懐かしく思った。EXPRESSの時から書いているから13年間を超えたはずである。もっともここ数年は不定期の掲載になっており「13年間連載」とは呼べないかもしれない。

 それ以外の活動はいずれも数年で終わっている。この『谷島の情識』もそうだ。2002年から始めたが2005年に投稿を止めてしまい、2015年2月から再開したものの7月からまた休んでしまった(2015年の再開については『「情識」再開の弁』参照)。昨年中断した直接の理由は日経コンピュータ編集部の事情なのだが、それを無視して書き続けることもできたはずだから他人のせいにはできない。

 仕事ではないが続けていることになっている取り組みに「酒封」がある。酒封とは携帯電話機に付けている御守りに書いてある言葉である。過去何度か繰り返してきた禁酒に再挑戦しようと御守りを買った。御利益があったのかどうか、酒封はそれなりに続けたし、夜の会合にはまったくと言ってよいほど行っていないが現在の実態は「続けていることになっている」というものである。

 ちなみに携帯電話機を持ったのは人生初の管理職になった2009年からで、酒封御守りは同じ携帯電話機に付けてある。2009年から機種を変更していないのは必要を感じないからで、何かを続けているわけではない。