「経営者がITに無知では会社が傾く」という題名を冠した「心地よいが何も変えない」文章を紹介する。何も変えないなら掲載するなと言われそうだが心地よい箇所もある。以下がその文章である。

 日本企業の情報化を推進するにあたって、最大の障害は何だろうか。既存システムのお守りに汲々としている情報システム部門か。あるいは横文字のキーワードを並べ立て、新製品の売り込みばかりに熱心な情報技術(IT)ベンダーか。

 ここはやはり、「問題は経営者にあり」と言い切りたい。さすがに人前で公言することは減ったが、自社内では、「コンピュータのことはよく分からないから、おれのところに案件を持ってくるな」と言い放つ経営者がまだまだいるようだ。

 あるITベンダーが、地方銀行の経営者を集め、「銀行の生き残り策とIT活用」についてセミナーをした。出席した地銀の経営者から集めたアンケート結果をそのベンダーの幹部が苦笑いしながら見せてくれたことがある。コメントにこうあった。「結構なお話でした。一度、当行のコンピュータ担当者に今日の話をしていただきたい」。

 ITを自分の経営課題ととらえて動こうとしない経営者がいる限り、情報化は絶対に進まない。ITをシステム部門に任せておけばいいと考えている経営者の頭を変えるか、変わらなければ退陣してもらう必要がある。

 あるITコンサルタントは、「経営者の目を覚ます方法として、株主訴訟が有効ではないか」とまで言う。一株株主であっても、経営者の経営責任を追及できるようになった。これまでは、もっぱら、粉飾決算とか、製造物責任(PL)がらみの責任を追及する株主訴訟が中心だった。

 だが、今後はIT問題で経営者が追求されることが増えるだろう。「ITの問題を放置しておくと訴えられる」、「ITのマネジメントを怠ると、損害賠償を請求される」といったショックを経営者に与え、自己改革をうながそうというわけだ。「それでも変わらない経営者については、もっともっと追求し退陣に追い込むしかない」とそのコンサルタントは真顔で語る。

 確かに、IT業界にいると、現代の怪談とでもいうべき、恐ろしい話が聞こえてくる。安いパッケージで十分な業務なのに自社開発に固執し、メインフレーマに巨額のシステム・インテグレーション(SI)費を払って、基幹系システムを再構築しているユーザーが少なくない。

 ある金融会社に至っては、単年度のSI費がその会社の経常利益を超えてしまい、開発費をひねり出しSIを続行するために、全社の事業計画を作り直した。本末転倒とはまさにこういう企業のためにある言葉であり、株主の怒りを買わないほうが不思議だ。

 逆にパッケージに振り回される企業もある。ある食品メーカーは当初、2億円の予算で始めた会計システムの再構築に10億円をつぎ込んだ。外資系のコンサルタント会社と外資系のパッケージ・ベンダーに総額10億円を支払って、成果はメインフレームの会計システムをUNIXサーバーのパッケージに移行しただけ。これまた営利企業の仕業とはとても思えない。