『12年前に書いた記事を検証する』『「死ぬまで仕事を続ける」という冗談が冗談ではなくなった』に引き続き、10年以上前にITproで公開し、その後消去した短文を再公開する。

 2003年2月6日と翌日7日、stickyという言葉について書いていた。先輩からメールをもらったことがきっかけである。まず6日分を再掲する。

2003年2月6日公開の短文

 「毎日楽しく情識を読ませてもらっています。ネットは谷島向きのメディアかもしれませんね。ネットのコンテンツはstickyでないと受けないので、stickyな谷島との相性はいいと思いますよ」

 昨日、ある先輩が送ってくれたメールに以上のような文があった。stickyと聞いて筆者がすぐ思い浮かべるのは『sticky fingers』というレコードである。これはあまり上品な言葉ではない。

 それはともかくstickyといったら、ねばねばするという意味ではなかったか。早速手近にある辞書を引いてみる。すると「くっつく、ねばねばする、頑固な、反対する、非常に不愉快な」と書いてあった。

 辞書をにらんで考え込んでしまった。先輩の文面を素直に受け取ると筆者を誉めていると思われる。だが「stickyな谷島」というところが気になる。どんなに困ったことがあっても酒を飲んで寝れば忘れてしまうし、自分ではさばさばした性格と思うのだが。

 さらによく考えた結果、「stickyな谷島」は性格ではなく、仕事態度を指していると思うことにした。執拗に同じテーマを追い続けるという意味でstickyである。特に最近ずっと書いている「コンサルティング会社問題」の記事はまさにstickyと言える。一部の方にとっては「非常に不愉快」かもしれない。

 「頑固な」という意味もあることが分かり、少し笑ってしまった。「情識」も本来はそういう意味なのである。

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 12年前の原稿なので「レコード」と書いている。今から10年後、「CD」も死語になるのだろうか。

 文中にあった「コンサルティング会社問題」の記事とは例えば『「動かないコンピュータ」とコンサルタントの関係』『読者96人の意見に答える――「動かないコンピュータとコンサルタント」問題について』などである。後者は読者96人のコメントにすべて応答し、それをそのまま記事にしたもので、しつこい取り組みであった。

 情識は情報化の常識という意味の造語である。何度か書いているように、ある経営者に考えていただいたものだ。ところが辞書を引くと情識は載っており、「頑固な」という意味があると書かれていた。

 続いて翌日2月7日分を再掲する。