「うちの経営者はITが分かっていなくて」。こうぼやく情報システム部門の責任者や担当者がいる。

 「顧客の経営者がITを分かっていないので」。こう愚痴を言うIT企業の責任者や担当者がいる。

 ITproを読んで下さっている読者の多くは情報システム部門やIT企業の責任者や担当者であろう。総称して以下では「あなた」と書く。

 「経営者が分かっていない」とあなたはしばしば思う。もっともである。企業が情報システムの開発や運用で揉め事を起こした時、経営者の言動を見聞きしていると「分かっていない」と感じることが多い。

 だが取材で経営者に会い、次のように言われたこともある。

 「うちの情シス(情報システム部門)には分かっていない連中が多い」。「長年付き合っているのに××(IT企業の名前が入る)は分かっていない」。

 「分かっていない」のは経営者なのか、それともあなたなのか。

「分かる」「分かっていない」の定義とは

 「分かる」「分かっていない」の定義をして話を進めたい。「ITが分かる」と言った場合、大きく二つの意味がある。

 一つはITが事業にもたらす効果や価値が分かること。もう一つは効果や価値をもたらすようにITをどう使えばよいかが分かることだ。

 ITが分からない経営者の一例を挙げる。頭が固く、ITの効果や価値を理解せず、なかなか投資を認めない。口癖は「それは本当に必要なのか」あるいは「それでいくら儲かるのか」である。

 そういう経営者に投資をなんとか認めてもらったとしよう。だが、実行時にも色々言ってくる。「額をもっと下げられないか」「インドの会社に頼んだら安くできるのでは」。それを聞いたあなたは「分かっていない」と嘆息する。

 ITが分からない経営者の例をもう一つ挙げる。分かっているつもりで実際には分かっていない経営者である。ITの効果や価値を過大評価しており、新しい情報を仕入れると「うちでも使え」と言ってくる。あなたからするとそれは無理である。

 効果や価値を分かっているつもりで実際には分かっていない経営者は使い方も分かっていない。新しいやり方を好み、最新のパッケージソフトやサービスを使いたがる。一切合切、アウトソーシングしようとする。あなたからするとそれは無理である。

 ITの効果や価値、そして使い方が分かっていない例を二つ挙げた。ところが経営者からすると、あなたの方が効果や価値、使い方を分かっていないと思える場合があり、次のような苦言を呈する。

 「技術の話ばかりするから事業に対する効果や価値を説明してくれと頼んだが要領を得ない。現行のシステムを更新したいと言ってくるばかりで新たな提案をしてこない。いつも同じ協力会社と組み、同じやり方をしようとする。もっと良いやり方があるのではないか」

経営に最も影響を与えるのは「テクノロジー」

 確かに経営者は情報システムの開発の難しさや維持管理にかかる手間にはさほど興味を持たない。だが、自社の経営に影響を与える要因としてならITに興味を持つ。その関心はITにとどまらず、テクノロジー全般に広がっている。調査結果をいくつか紹介しよう。