2016年、経営革新においてITが主要な役割を果たす傾向は中小企業へ広がり、新市場開拓や競争力向上といった攻めの経営により本格的に挑むことができるようになる。デジタルビジネス(デジタルイノベーションやデジタライゼーション)、およびIoT(Internet of Things)を実現するクラウド、モバイル、ビッグデータ、ソーシャルといった技術が普及期を迎え、中小企業を含めた幅広い規模の組織が利活用を進めやすくなるためだ。

 経済産業省は、新たな事業価値の創出や競争力向上など攻めの分野におけるIT利活用に積極的に取り組む中小企業を選定する「攻めのIT経営中小企業百選」を実施している。2014年度から3年かけて合計100社を選ぶ計画で、2014年度分については2015年10月27日に33社が発表された。選定された各社の取り組みは経済産業省のサイトにまとめられている。2015年度分は募集が終わったところだ。2016年2月下旬までに審査が行われ、4月~5月ごろに結果が発表される予定である。

 この「攻めのIT経営」における「IT経営」とは「ITを戦略的に使いこなし、競争力や生産性の向上を実現し、経営力アップをする」ことで、経営とITを一体的にとらえて改革や効率化などを進めていく。日経BP社では、有料オンラインサービス「ITproプレミアム」の一環として、ITコーディネータ協会との協力により「ITコーディネータの仕事」というコーナーで、中小企業の先進的なIT経営実践例を紹介してきた(該当サイト)。

 2015年11月および12月に掲載した記事では、攻めのIT経営中小企業百選にも選定された「かないわ病院」「遠赤青汁」の事例をそれぞれ紹介している。いずれも、新たな業務領域に取り組んだり、新たな市場へ進出したりする際、IT経営を実践しているところが共通する。

 かないわ病院(関連記事:医療現場の改革を攻めのIT経営で支援)は、従来型の精神科医療を中心とする病院経営が転機を迎えたのを契機に、急性期化および複合化といった、より重要性の高い医療への対応をIT経営で進めた。高セキュリティ・ノンストップ稼働の仮想化基盤をベースに、電子カルテを中心とした病院情報システムの刷新を実施した。

 遠赤青汁(関連記事:「攻めのIT経営」でグローバル市場を開拓)では、青汁(あおじる)などの健康食品の製造・販売事業の成長をIT経営で進めてきた。同社では、製造・販売関連データの蓄積を行っているほか、モバイルデバイスとクラウドを活用してビジネスのグローバル化に対応できる仕組みを整備している。