クラウドコンピューティングという言葉が登場したのは10年前の2006年。米アマゾン・ドット・コムが現在のパブリッククラウドの先駆けとも言えるAWS(Amazon Web Services) S3(ストレージ)やAWS EC2(仮想サーバー)のサービス提供を開始したのも2006年だ。10年を1サイクルとすると、今年2016年でクラウドは2サイクル目に突入することになる。

 最初はバズワードかとも思われたクラウドだが、そのサービスや技術は1サイクルを経て、すっかり成熟した。クラウドを熟知したエンジニアの層も分厚くなった。あらゆる分野で事例も増えた。

 日本企業にとっての使い勝手も確実に向上している。例えば最大手のアマゾンは2015年2月からAWSの利用料金を円で支払えるようにした。そのアマゾンを激しく追撃する米マイクロソフトは2015年1月に日本国内のデータセンターに企業が専用線で接続できるようにした。これまで円払いはマイクロソフトしか、専用線接続はアマゾンしかそれぞれ提供しておらず、お互いに弱点を補強し合った格好だ。

 クラウドの爆発的普及に向けた特異点は確実に近づいている。1年前のコラムで筆者は「2015年は、これまでパブリッククラウドに消極的だった企業が一気に動き出すかもしれない」と記した。予測は的中した。2015年はファーストリテイリング、旭硝子、丸紅といった名だたる大企業がクラウドファーストを宣言した。大和ハウス工業のように、すでに全システムのクラウド移行を完了した企業もある。2016年、クラウドへの移行がさらに加速するのは確実だろう。