今から1年前の本欄で、「1人1台端末が導く新たな学び」をテーマにして、教育現場で進むICT活用について展望しました。2016年の教育現場は、1人1台端末によるICT活用教育が着実に進む一方で、さまざまな課題が顕在化する1年になりそうです。

 教育現場の1人1台端末による学びとは、児童や生徒、学生がパソコンやタブレットなど自分用の情報端末を持って学習することです。政府が2013年6月に発表した「日本再興戦略」では、「2010年代中に1人1台の情報端末による教育の本格展開に向けた方策を整理し、推進する」としています。

 こうした方針に沿って、小中学校では東京都荒川区(小中学校)、滋賀県草津市(小学校)、岡山県備前市(小中学校)などが1人1台の情報端末を導入。佐賀県は、すべての県立高等学校で、2014年度に入学した生徒から1人1台の情報端末を導入しています。また、金沢大学、広島大学、高知大学、九州大学、長崎大学など、入学時にパソコンの所有を求める「必携化」に取り組む大学も全国で増加しています。

新しい大学入試はコンピューターで受験する

 1人1台の環境整備が進むのは、学習内容の理解が進んだり、ICT活用スキルが向上したりなど、さまざまなメリットがあるからです。今後は大学入試制度の見直しも、1人1台の普及を後押ししそうです。現行の大学入試センター試験に代わって、2020年度には「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」が始まる見込みです。

 新しいテストでは、従来のセンター試験とは異なり、記述式の問題を盛り込むことを想定しています。また、コンピューターを利用して実施する「CBT」(Computer Based Testing)を導入することを目指しています。このため新テストでは、情報端末やキーボードの操作スキルが大学入試の成績に大きく関係するようになると考えられます。全国の中学校や高等学校では、大学入試の観点からも、ICT活用スキルの向上を図る必要が出てくるでしょう。