2016年はデジタルビジネスの創出に向けた取り組みが活発になるだろう。そしてそれは単に企業のビジネスを変えるだけでなく、経済活動をも変える大きな動きになっていくのではないか。

 デジタルビジネスという言葉を頻繁に聞くようになってきた。従来は、例えばSMAC(ソーシャル、モバイル、ビッグデータ・アナリティクス、クラウド)のように、技術用語そのものが話題になることが多かったが、これらを使ってビジネスをどう変えていくのかに焦点が移ってきている。

 我々は2015年8月に、CIO(最高情報責任者)やCTO(最高技術責任者)、ITベンダーの経営幹部13人をメンバーとする「ITpro EXPOステアリング・コミッティ2015」を開催し、日本の発展や日本企業の成長に向けたICT活用の在り方を議論した。

 その場でも、「技術革新で、社会や企業の状況は明治維新に匹敵する。それくらい大きな変化が起こっている」「IoT(Internet of Things、モノのインターネット)や人工知能などの技術の本質を理解し、ビジネスモデルを革新しなければグローバルでの戦いに負ける」「クラウドなどの普及により、ICT活用のハードルが下がり、様々な企業が新たなビジネスに挑めるようになった」といった危機感を唱える声が数多く挙がった(関連記事:前例なき変革の時代に勝つ CIOとベンダー首脳が問題提起)。

 ここでデジタルビジネスとは何か。ガートナーは「デジタルの世界と物理的な世界の境界を曖昧にすることによって、新しいビジネス・デザインを創造すること」と定義している。デジタル技術の進展により、これまで扱えなかった様々なモノやコトがデジタルデータに変換され、蓄積・分析できるようになった。デジタルデータによって、人、モノ、コトをつなぎ、新たなビジネスを創出したり、ビジネスに新たな価値をもたらすことが可能になった。これがデジタルビジネスの本質である。

 日経コンピュータが2015年12月に発行した『デジタルビジネストレンド』では、デジタルビジネスと従来のIT活用との違いとして、活用する技術の幅広さを挙げている。パソコンをはじめ伝統的なコンピュータやスマホにとどまらず、センサーや無線通信といったIoT技術、さらには人工知能やドローン、ロボットなど、あらゆるデジタル技術が活用の対象になる。

 デジタルビジネスは既存のルールや常識を一気に変えてしまう可能性を秘める。NTTデータ経営研究所の三谷慶一郎 情報戦略コンサルティングユニット長 パートナーは、「デジタルビジネスは、うまくビジネス規模が拡大できれば、関連するデジタルデータの蓄積量も莫大になり、それらがさらにビジネスの優位性を創り出すという好循環が生まれやすい。エンドユーザーの心を捉える新しいサービスを創造できれば、既存業界に破壊的な影響を与えるようなビジネスに発展する可能性がある」と指摘する。