ITは社会や生活の変革を進め、ITエンジニアは正解がないシステム作りが求められる――。2016年から加速する日本国内のIT関連の動きをまとめるとこうなる。

 近年、ITを活用する場が、企業内の業務効率化から、企業外部に向いたサービスや新事業へと大きくシフトしている。スマートフォンや近接無線通信技術を使って顧客に直接マーケティング活動を行うオムニチャネル(O2O)などはその代表格だ。O2Oだけでなく、オンラインを通じた各種サービスが続々と立ち上がってきている。

写真1 hitoeを用いたスポーツウエア(左)と開発責任者の佐藤康博氏(右)
写真1 hitoeを用いたスポーツウエア(左)と開発責任者の佐藤康博氏(右)

 2016年は、こうした動きの延長線として、社会や個人の生活に広がる。ウェアラブルやセンサー、無線といった技術の利用が進んでいくだろう。例えば、日経SYSTEMSで昨年取り上げたものでは、NTTが開発した、心電波形を取得できる機能素材「hitoe」(写真1)が挙げられる。スマートフォン経由で無線通信を使い、データを取得する。さまざまな応用が考えられるが、建設現場で作業している人に対してリモートから体調管理をする実証実験を実施した。

写真3 MEMEと連携したスマートフォンアプリ
写真3 MEMEと連携したスマートフォンアプリ
写真2 センサー搭載のJINS MEME
写真2 センサー搭載のJINS MEME

 2月号で取り上げる、JINSが開発したメガネ型ウェアラブル端末「MEME(ミーム)」(写真2、3)は、ランナーの体幹のぶれやホワイトカラーの疲れを検知するセンサーを備える。こうしたデータを取得して認知症の判断に役立てるという目的も持っている。同様な例を挙げるとキリがないが、農業や医療、工場、自動車のIT化でも事例が出始めている。

写真5 SORACOMの創始者である玉川憲氏
写真5 SORACOMの創始者である玉川憲氏
写真4 IoT用SIMカード「SORACOM Air」
写真4 IoT用SIMカード「SORACOM Air」

 こうした動きは、IoTやスマート××というキーワードでくくられる。ソラコムがLTE/3G回線を使ったSIMカード(写真4、5)とクラウドを組み合わせたIoTプラットフォームを提供し、多くのベンダーがサービス/システムを開発するなど、昨年末から日本国内でも加速している。

IoTバックエンドはエンタープライズ系の領域

 IoTのシステムが本格化してくれば、組み込み系よりもむしろエンタープライズ系のITエンジニアの領域といえる。バックエンドにはサーバーやデータベース、アプリケーションがある。サービスを止めないためには、業務プロセスや運用の設計が必要で、コストの最適化にはITアーキテクチャーを適切に設計する必要もある(関連記事: ピンチに陥らないシステムダウンの起こし方を参照)

 さらに大量のデータを処理するには、Apache HadoopやSparkに代表される分散処理技術のノウハウがいまや必須(関連記事:RDBMSを捨てたワークス「HUE」でホントに知りたかったことを参照)。未知の情報を掘り起こす機械学習の活用も、ITエンジニアが担うべき領域である。

 ITエンジニアとして最も難しいのは、要求のとりまとめだ。従来のように業務改善であれば、現状の課題から要求を掘り起こせばよかった。顧客や一般個人を対象にするサービスの場合は、明確な解答はないし、要求をまとめる手段もこれまでのようにはいかない。利用部門と協力してアイデアを創出したり、コンセプトをまとめたりする役割がITエンジニアに課せられる。