携帯料金が安くなる――こう期待して2016年を迎えた方は少なくないはずだ。

 安倍晋三首相の指示で始まった携帯電話の料金引き下げ議論は2015年12月18日に決着がついた。高市早苗総務大臣による直々の是正を受け、NTTドコモをはじめとする携帯大手3社は「自主的な取り組み」によって、2016年1月下旬にも新たな料金体系を発表する。その目玉として「月5000円以下」の低料金プランが確実視されている。データ通信をそれほど利用しないライトユーザーにとっては朗報だろう。

 「多様化」。今回の料金引き下げ議論で重要視されたキーワードだが、2015年を通しても通信業界を象徴するキーワードだったと言える。通信自由化30年の節目にふさわしく、従来の枠にとらわれない新たなチャレンジがいくつも出てきたからだ(参考書籍:通信業界の裏側が分かる2016)。

 例えば、格安スマホで価格破壊に挑むMVNO(仮想移動体通信事業者)の興隆、光ファイバーの潜在用途を開拓する光コラボレーション事業者の登場、ポイントや物販、電力といった本業以外のビジネスを強化する通信大手3社――。各社の取り組みは2016年にかけて本格化していく。通信業界にまん延する「成熟化」を打ち払うためには挑戦を続けるしかないからだ。

成熟化の弊害がユーザーに露呈

 通信市場の成熟化は、携帯電話などの移動系、FTTHに代表される固定系とも数字に表れている(図1)。それによる弊害もユーザーに見える形で噴出している。

図1●成熟化が進む移動電話市場と固定系ブロードバンド市場
図1●成熟化が進む移動電話市場と固定系ブロードバンド市場
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 総務省の発表によれば、2015年3月末時点で日本における移動系通信(携帯電話、PHS、BWA(広帯域移動無線アクセスシステム)の合計)の契約数は前年同期比5%増の1億4998万となり、このうち携帯電話は同5.4%増の1億4998万だった。そして大手3グループ別に見た市場集中度(HHI)は3455とほぼ横ばいで推移している。

HHI▼Herfindahl-Hirschman Index。ハーフィンダール・ハーシュマン指数。市場集中度を表す指標。当該市場における各事業者の有するシェアの2乗和として算出される。完全競争的な市場における0(ゼロ)に近い値から完全な独占指標における10000までの範囲の値をとる。