日経BP社は2016年3月22日に「日経FinTech」を創刊する。FinTech業界を1冊で俯瞰できる300ページ以上の年鑑に加え、4月からは会員限定ウェブサイトや月刊ニューズレターで動きの早い業界の動きをカバーする。四半期に1回、カンファレンスやセミナーも開催する。金融と技術の融合が織りなすFinTech市場の動向を、全力でお伝えしていくつもりだ。

 時計の針を今から19年前まで戻してみる。日経BPは1997年3月、「日経デジタルマネー・システム」というニューズレターを発行している。このニューズレターは1999年11月に休刊するまでの2年半近く、電子マネーや電子決済システムなどに焦点を当て、情報提供を続けた。

 当時の松本庸史編集長の創刊挨拶の一文目には、こう記されている。

 「ネットワーク社会の発展は通貨の姿まで変えようとしています。貨幣や紙幣の形で流通してきた通貨=お金の価値がデジタル信号になり、『電子の財布』に入れて持ち歩くことができるようになります。ネットワーク上で買い物や資材購入などの取引を行うと同時に、お金のデータをネットワークで送るということも一般的になります」

 インターネット接続機能を標準搭載した米マイクロソフトの「Windows 95」が発売されたのが1995年。日本でヤフーがポータルサイトを開設したのが1996年だ。1997年は今のような高速通信ではないものの、ダイヤルアップ接続でインターネットに接続する人が少しずつ増えてきたころだ。既にこのころから金融と技術を融合させることで何を実現できるのか、活発な議論が交わされていた。歴史を知る人ほど、なぜ今、FinTechが突然、盛り上がりを見せているのか不審に思う人は多い。