新しい年を迎えて早くも、半月が過ぎた。動きが早い通信業界であるため、このタイミングで年初気分を引きずった展望記事は気恥ずかしい面もある。そこで2015年を簡単に振り返りつつ、できるだけ最新情報を盛り込み、2016年の通信業界の注目点に触れたい。

 2015年は通信自由化30周年という節目の年に相応しく、話題が盛りだくさんだった。格安スマホに代表されるMVNO(仮想移動体通信事業者)が第四の勢力として存在感を示したほか、NTT東西は2015年2月に光回線の卸サービス「光コラボレーションモデル」を開始。いずれも新規参入事業者を促す取り組みであり、通信業界の深部に地殻変動をもたらしている。

 一方で携帯大手3社のサービスは、一層の同質化が進んだ。新たなビジネス拡大の方向性として自らの“経済圏”を作るべく、ポイントプログラムを活用したり、異業種との協業を図るといった動きが目立った。もちろんこれらの動きは新たなユーザー囲い込み策という側面もある。しかし競争軸が通信以外の領域に広がり、もはや通信の強みが必ずしも優位にならない時代に突入しつつあることが明白になっている。

 そんな携帯大手3社に突如降りかかったのが、業界関係者の間で「通信業界の“9.11”」として記憶される安倍晋三首相による携帯電話料金引き下げ指示だ。業界全体が騒然となったこの引き下げに向けた議論は、2015年12月16日に開催された総務省の有識者会議によって一定の結論を得た。行き過ぎた端末購入補助を是正し、ライトユーザーや長期ユーザーのニーズにも対応した料金プランを提供するよう、総務省は携帯大手3社に対して要請を出した。

業界構造にメスを入れる動きが目白押し

 2016年にまず注目したいのが、この携帯料金引き下げ議論の余波である。高市早苗総務大臣は「2016年1月末を目途に適正化の取り組み状況に関する報告を求める」としているため、携帯大手3社は2016年1月中にも、新たな対応プランを打ち出すとみられる。