前回は、ブロックチェーン技術がなぜ優秀なIT技術者を惹きつけているかを、現場の声を基に探った。今回は、国内のスタートアップ企業が開発している二つのブロックチェーン技術「mijin」と「Orb」について、その特徴を解説する。

mijinの力点はプライベートチェーンの特徴を生かした高速化

 テックビューロの「mijin」は、オープンソースのブロックチェーンソフト「NEM」の主要開発者が、2015年春以降にテックビューロに合流し、企業向けブロックチェーン技術として開発したものだ。誰もがノードとしてP2Pネットワークに参加できる「パブリック型」よりも、特定のノードのみ参加が許可される「プライベート型」での利用を想定して開発している。

 mijinの開発における力点は、トランザクション(取引)処理の高速化だ。

 ビットコインやNEMのようなパブリック型では、高性能サーバーからスマートフォンまで様々なノードの参加を許容するため、ハードウエアの特徴に合わせて処理を最適化することが難しい。現行のトランザクション処理量は、NEMの場合は1秒当たり2件ほど、ビットコインでは1秒当たり6~7件ほどを想定している。

 mijinでは、参加するノードは許可制(permissioned)とし、ノードのハードウエア仕様をそろえることを前提にマルチコアやGPUでの処理に対応させている。加えて、ノード間のコンセンサス(同意)機構について、ノードの計算資源に依存した「proof of work」は採用せず、コイン保有量などに依存する「proof of stake」を採用する。プライベート型で利用する限りは、ビットコインのようなパブリック型チェーンと比べて悪意あるノードが入り込む余地が少なく、悪意あるノードを排除するため大量の計算資源を消費するproof of workは必要ないとの判断である。

 さらに従来のブロックチェーンではストレージの伝送速度にトランザクション処理のボトルネックがあったため、mijinでは伝送負荷を軽減できる独自のデータ管理フォーマットを採用した。

 この結果、近接した複数のサーバーでP2Pネットワークを構成した場合で、1秒当たり1万トランザクションを実現。サーバーを遠隔地に分散配置し、インターネット回線で接続した場合でも1秒当たり500トランザクション、専用の高速VPN回線で接続すれば1秒当たり数千トランザクションを実現できるとする。