「TechCon 2015」の一番のテーマは組み込み向けプロセッサ用の新アーキテクチャー「ARMv8-M」の発表だった。2014年のTechConでは、IoT向けの「mbed OS」を発表した。ARMは、スマートフォンなどで利用されるアプリケーションプロセッサの次の「柱」をIoTに定め準備を進めつつある。

 IoTとは簡単にいえば、インターネット接続性のある組み込みシステムだ。もちろん、これまでも据え置き型の機器は、有線によるネットワーク接続を行えるものはあった。例えば、既に国内で普及しているテレビやBlu-ray Disc(BD)レコーダーなどは、Ethernetコネクターを備えている。

 しかし、IoTでは、主に無線での接続を想定している。これにより、外部電源が接続されていないバッテリー駆動の機器でもネットワーク接続が可能になる。利用形態によっては、直接、あるいは別の機器を介して間接的にインターネットに接続することが前提になる場合もある

 IoT機器には、家電やウエアラブルデバイスなどのように比較的高性能なものもあるが、センサーに通信機能を持つコントローラーを組み合わせた非常に簡単な機器も含まれる。

 こうしたIoT機器は、無線通信機能や機器管理、ファームウエア更新など、ある程度の機能をあらかじめ備えている必要がある。IoT機器のメーカーが独自に通信スタックなどを開発することもできるが、プロセッサやその周辺チップのベンダーが基本的な機能をファームウエアとして用意しているなら、それを利用した方が、IoT機器の開発者は自身のアプリケーションの開発に専念できる。

 また、通信に関連するソフトでは、仕様を厳密に解釈するだけでなく、ある程度の許容性を持たせて、接続性を高めるようなノウハウが必要になる。仕様を厳密に実装したソフトを作っても、仕様の解釈の違いやエラーへの対応、不正確な実装、タイミング的な問題などがあり、ゼロから開発した場合は、実用的な段階に到達するまで長い時間がかかってしまう。

 こうした問題に対応するために組み込み分野では、Linuxのようなネットワーク接続で実績のあるコードを持つOSを採用するといったやり方が行われてきた。しかし、IoT分野では、Linuxのカーネルを動かすにはプロセッサ性能が低かったり、メモリーが少なすぎたりするシステムなどが含まれる。