Cortex-A35は、ARMv8-Aアーキテクチャーのプロセッサ。電力効率を重視して設計された。ARMのアプリケーションプロセッサには、大きく2種類ある。一つは、性能を重視して設計されたもの、もう一つは、電力効率を重視して設計されたものだ。

 というのは、ARMは、性能の高さと消費電力の小ささを両立させるため、高性能と低消費電力の2種類のプロセッサを組み合わせて、負荷状態などにより、プロセッサを切り替えて処理する「big.LITTLE処理」をハイエンド向け構成で利用できるようにしているからだ。

 一般に、性能を重視したプロセッサでは、投入順とは関係なく処理できる順に命令を実行することで効率を高める「アウト・オブ・オーダー」や、並列で処理する「スーパースケーラー」などの機能を持つ実行パイプラインを備えている。しかし、性能を重視すれば、消費電力がどうしても大きくなってしまう。また、製造においても、高いクロック周波数が得られるプロセスが利用されることがある。そうしたプロセスも消費電力の増大につながる。

 一方、消費電力の小ささを重視した設計では、アウト・オブ・オーダー実行などを採用しない簡素なパイプラインにすることが多い。命令の並列実行を可能にしても、2命令程度にとどめ、回路規模が大きくならないようにする。製造も消費電力の小さいプロセスを採用する。

 このように消費電力の小ささと性能の高さは相反する関係にある。言い方を変えると、現状では、高性能で消費電力の大きなプロセッサを作るか、消費電力が小さく、性能が高くないプロセッサのどちらかしか作れない。ところが、スマートフォンを含めて世の中の機器には年々高い性能が求められる。プロセッサ性能が高ければ、ソフトの可能性が大きく広がるからだ。

 スマートフォンはバッテリー動作が必須であり、高性能と低消費電力を両立させる必要がある。このために考えられたのがbig.LITTLEという構成だ。