英ARMは2015年11月10日、米国サンタクララ市で開発者向けのイベント「TechCon 2015」を開催した。同イベントでは、新しいアプリケーションプロセッサの「Cortex-A35」や、IoT向けの新アーキテクチャーとなる「ARMv8-M」などが発表された。
ARMのプレスリリースによると、イベント期間中には以下の製品などが発表された。
- アプリケーションプロセッサCortex-A35
- 組み込み向けプロセッサの新アーキテクチャーARMv8-M
- mbed Device Connector
- mbed OS 3.0テクニカルプレビューとmbedレファレンスデザイン
Cortex-A35がスマートフォン(スマホ)などに利用されるプロセッサで、あとの3つは、IoT関連のものになる。
Cortex-A35は低価格スマホ向けの低消費電力プロセッサ
Cortex-A35は、低消費電力、低価格帯を狙う64ビットプロセッサ。現在、安価なスマホなどに利用されている32ビットプロセッサA7の64ビット版という位置付けだが、内部構造やマイクロアーテキクチャ(命令を処理する機構の設計)は大きく異なる。
機能は上位の64ビットプロセッサと同一であるものの、省電力指向で設計されている。上位のプロセッサと比べてチップの占有面積が小さいため、低価格帯の製品に利用するSoC(システム・オン・チップ)の開発に向いている。
A35の登場により、アプリケーションプロセッサのラインアップは変わった(図1)。64ビットでも3ラインのプロセッサ製品が提供されることになる。
ARM社は、これを「高性能」「高効率」「超高効率」と分類する。ARMは自社で半導体チップを作らず、チップの設計をSoCを製造する半導体メーカーやセットメーカーにライセンスするのがビジネス。最終的にどのような製品をターゲットにしたSoCを作るのかは、半導体メーカーの判断になる。
現状、スマホの低価格帯向け製品(エントリーレベルの製品)には、消費電力が小さく実装面積が小さなSoCが採用されている。消費電力が小さければ搭載するバッテリーの量を抑えてコストを削減できる。実装面積が小さいと、外装や基板のコストを下げやすくなる。
Cortex-A35搭載スマホの登場は早くて2016年
ARMの調査によると2015年に出荷されたスマートフォンの50%が64ビットのアーキテクチャー「ARMv8-A」を採用しているという。また、2014年に出荷されたスマートフォン14億台のうち6億台がエントリーレベルのスマートフォンであり、これが2020年までに10億台へと成長すると予測している。Cortex-A35は、この「64ビット」かつ「エントリーレベル」に対応したプロセッサだ。