2015年のビッグデータ分野の話題は、人工知能(AI)が席巻した。自動車の自動走行技術やロボットが話題になったこともあり、AIへの注目度が一気に高まった。企業での活用も広がってきた。一方で読者の関心が高かったのが、ビッグデータの中でも個人の購買履歴や位置情報といったパーソナルデータに関する記事だ。プライバシーを適切に保護しつついかに活用するかをテーマにした記事が人気を集めた。
ランキングの1位は「【記者の眼】 「携帯電話番号は個人情報に当たらない」、新経連に真意を聞いた」だった。閣議決定した個人情報保護法の改正案で、携帯電話の番号は個人を特定し得る情報として、保護対象になる可能性が出てきた。これに対して楽天などインターネット企業を中心とする新経済連盟(新経連)が反発。その真意を聞いたものだ。10位にも「【News & Trend】 なぜCCCはプライバシーマークを返上し、T会員規約を改訂したのか(前編)」がランクイン。ビッグデータの利活用とプライバシー保護の両立への関心が高いことを印象づけた。
ランキングにはAI分野の最新動向に関する記事が多く入った。「脳に挑む人工知能」シリーズからは、「Watsonテクノロジーの全貌、IBMはなぜAIと呼ばないのか」「なぜロボットに感情が必要なのか、ソフトバンクの熟慮(上)」「女子高生AIりんな、4時間も会話が続く理由」など7本、「ビッグデータは人工知能に任せた!」シリーズも「人工知能を制する者が勝つ」など2本がランクインした。一方で、「Deep Learningの実力と限界、人工知能のロードマップ」では、米国の学界でAIに対する厳しい見方も出ていることを紹介した。
マーケティングや顧客サービスの改善に向けた、ビッグデータ活用事例の記事も目立った。「【Itpro Report】 「現金お断り」の格安自販機登場 JR東が駅ナカで投じた一石」で取り上げたのは、JR東日本グループが運営する、電子マネー「Suica(スイカ)」専用の自動販売機。従来の自販機では難しかった、データを活用した精緻なマーケティングができるとの可能性を紹介した。
AIに並ぶビッグデータの有用な活用分野がIoT(Internet of Things)だ。「【記者の眼】 激安スーパーを支えるIoT、30分後の混雑予測」では、北関東を地盤にするスーパーであるベイシアが、IoTシステムを使ってレジの混雑緩和に取り組んでいる事例を紹介した。プライバシー保護論議をはらみつつ、2016年もビッグデータ活用例は広がりそうだ。