「Silicon Valley is coming(シリコンバレーがやってくる)」――。米JPモルガン・チェースのジェームズ・ダイモンCEO(最高経営責任者)は2015年4月に送付した「株主への手紙」のなかで、スタートアップ企業が提供する金融サービスへの危機感を露わにした。米国の大手金融機関のトップの言葉は、テクノロジー発の新しい金融サービスFinTechの影響力を物語る。
FinTechの波は日本にも押し寄せている。金融関連サービスに参入するスタートアップ企業が次々と誕生し、大量の顧客を抱えるサービスも出てきた。今まで静観を保ってきたように見えた銀行も一斉に動き出している。共栄と対立の構図が混じり合うFinTechをキーマンはいかに見ているのか。米ペイパル・ホールディングスのダン・シュールマン社長兼CEO(最高経営責任者)に聞いた。
なぜペイパルはイーベイと異なる道を歩むことになったのでしょうか。
金融サービスが置かれた状況がめまぐるしく変化し、急速に発展している今、スピードが最も大切だからです。ペイパルが独り立ちするにはいいタイミングでした。(イーベイの戦略など)ほかのことに気を取られている場合ではありません。
財務基盤は盤石で、今後、企業の買収を通じてデジタル決済やモバイル決済分野での優位性を高められます。イーベイとは別の道を歩んだほうが互いに価値を高められるという判断に対して、市場も理解を示しています。
今後の3~5年間に金融市場で起きる変革は、過去の20年間よりもずっと大きいものだと見ています。お金はデジタル化され、商業活動もまた変わっていくでしょう。
世界には約50億台の携帯電話が普及していますが、銀行口座は10億しかありません。そして、我々が身を置く決済市場は25兆ドル(約3000兆円)の市場規模があります。オンラインストアから実店舗に至るまで、消費者と店舗の双方がデジタル決済という新しい変化を求めているのが今です。
PayPalはただの決済ボタンではない
ペイパルは今後どのような会社を目指すのでしょうか。
皆さんにとって、今までPayPalはオンラインストアで見かける決済ボタンの一つに過ぎなかったかもしれません。しかし、実はもっと多岐にわたるサービスを提供しています。
世の中にはPayPalを使っている人が1億7000万人以上いて、1000万以上の加盟店がPayPalのプラットフォームを使い、売り上げを伸ばしています。これは当社が提供するプラットフォームが安全で確実、そしてシンプルで簡単に取り引きできる環境を整えているからです。