11ac対応製品は既に市場に登場していますが、すぐにすべての無線LAN機器が11ac対応に置き換わるわけではありません。従って、11ac規格は、旧規格製品すなわち11aあるいは11n対応製品と、11ac対応製品を混在させた形で利用することを想定しなければなりません。

 11acには、そうした既存規格とうまく共存するための仕組みが備わっています。

フレームの種類を判別する仕組み

 11ac対応機器が11n以前の規格に対応した機器と通信するためには、異なる規格のフレームを受信する必要があります。そのために求められるのは、受信したフレームがどの規格なのか判断する仕組みです。11acは5GHz帯だけをサポートするので、対象となる既存規格は11nと11aになります。

フレーム種別を瞬時に判定

 802.11規格では、複数の無線LAN機器が単一の無線チャネルを共有しています。ただし、どの端末がいつチャネルを使うのか集中管理しているわけではありません。各端末が自律分散的に動作し、チャネルを使い分けます。

 802.11規格にはそのための仕組みとして、「CSMA/CA」というアクセス制御方式を採用しています。CSMA/CAでは、APや端末は送信に先立ち、自身がこれから使おうとしているチャネルを他の端末が使っていないか確認します(キャリアセンス)。

 既に他の端末がチャネルを使っている場合は、混信を防ぐためにフレームの送信を保留し、しばらく待ってから送信します。このとき、待ち時間の長さを無作為に設定する「ランダムバックオフ」という方法を採用しています。これにより、同時送信による無線フレームの衝突頻度を下げつつ、複数の端末が公平にチャネルを利用できるようにしています。

 こうした仕組みにより、送信権を得る端末がランダムに決まるため、11acをはじめとした802.11規格では、無線フレームを実際に受信するまでどの端末が送信したのか把握できません。従って、フレームの受信を始めるまで11a/n/acのどの規格なのか事前にわからないのです。

 そこで、無線フレームがどの方式に対応するのかをヘッダーの先頭部分にある情報から瞬時に判定する必要があります。