慢性的な人材不足にあるIT部門では、新卒採用や中途採用による人数増も重要だが、それと同時に既存メンバーの生産性を高めるための取り組みも重要となる。事業部門のユーザーが望むシステムを実現するには、彼らと積極的にコミュニケーションをとってニーズをヒアリングし、解決策を提案できるスキルを身に付けなければならない。

人材育成に消極的な組織

 教育訓練としては業務を通じて実施するOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)と、研修などの業務を離れて実施するOFF-JT(オフ・ザ・ジョブ・トレーニング)がある。OJTは新人や中途採用した人材を対象に、各チームの通常業務を通して指導する。継続的かつ反復的に業務を実践できるOJTの導入はスキル向上に有効であり、ほとんどのIT部門で導入している。

しかし、トレーニー(被研修者)への適切なフィードバックは評価軸が整備されていないことが多く、トレーニーは自身の理解度を客観的、かつ定量的に把握することができない。IT部門の上長も、部署全体のスキル習熟度を測ることができず、OJT体系の見直しが難しい。

 既存システムの運用・保守においては、今以上のコスト削減が求められており、改善に必要な投資すらも承認されない状態である。既存システムを担当するメンバーについては、OFF-JTの機会が得られない場合がある。IT組織として受講すべき研修内容を体系化せず、メンバーの自主性に依存してしまっている企業も多い。

 研修受講者が、互いに受講した内容を教える機会も無いため、スキルが組織内に波及せず、個人にとどまる。この結果、個人の持つスキルに大きなバラつきを生み出す。こうした状況のままでは、組織として目指すべき人材像や戦略的な育成方法を提示することができない。

 しかも、OFF-JTの機会が与えられても、新しいことを覚えようとする学習意欲が低い 人材が多数存在する。この意欲の低さがネックとなり、IT部門は人材育成に対して消極的 になる。