「これからのIT部門にどのようなプロフェッショナルが必要か」ということを、企業として明確に定義できている企業は少ない。IT活用は会社全体の課題になってきている今、「ITのことはIT部門が考えるべき」ということでよいのであろうか。

デジタル時代に必要なプロフェッショナルの定義が無い

 営業組織が強い企業は、強い営業担当者を育てる風土が出来上がっている。自社らしい営業スタイルとはどのようなものなのかが、組織の中に共通認識として存在している。「伝説の営業マン」と言われる人が現役、あるいはOBにいて、営業として誰もが驚く実績を上げ、その伝説が語り継がれている。

 製造業の製品開発部門にしても同様である。研究者や開発者として第一級の技術や見識を持ち、大ヒット製品の商品化を進めたレジェンドが必ず存在する。企業の中堅メンバーにインタビューすると、その企業特有のプロフェッショナル像も浮かび上がる。

 IT関連ではどうだろうか。IT技術者のプロフェッショナル像を尋ねると、大規模なシステム開発の話や、それを担当したプロジェクトマネジャーの名前は挙がる。企業のM&A(合併・買収)に伴い限られた時間でのシステム統合を担当し、辛酸をなめた人も多い。

 しかし、IT戦略を構想する人や革新的ITサービスの考案者となると、その姿が見えなくなる。人材要件として明確に定義されていることも少ない。「これからは、ITを活用した新サービスの企画開発が重要だ」と経営が言っているのに、それを実践する人材像が明確でない。それが多くの企業での実態ではなかろうか。

 IT人材像を定義している企業でも、それは既存のIT技術を前提としたエンジニアやプロジェクトマネジャーとしてのキャリアパスである。こうしたスキルは、今後も必要ではある。だが、デジタル時代のイノベーション機能を担う要員のスキルではない。