オムニチャネルやFinTech（金融×IT）、IoT（Internet of Things）など、いわゆるデジタルビジネスがグローバル規模で急速に勃興しつつある。日本企業にとっても、ビジネスのデジタル化は大きな経営課題。しかし、その中軸的役割を期待されるIT部門は、目の前の業務に忙殺され、組織として追い込まれつつある。
そこで、IT部門を変革し“デジタル化”の旗手に脱皮させる処方箋をまとめた書籍『デジタル化を勝ち抜く新たなIT組織のつくり方』を緊急出版した。今回は、その中からIT部門の問題点の現状分析を紹介する。
出典：『デジタル化を勝ち抜く新たなIT組織のつくり方』第2章
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ある程度決まった範囲の業務を遂行するには、この階層化組織が最適であった。しかし、革新的なサービスを実現するには、スピードと柔軟性が必要となる。階層型の組織構造だと様々なデメリットが生じる。
IT部門を効率的に運営するために、その組織構造は階層型になる。業務の目的と内容とが明確になっていることが、業務を効率的に遂行するうえで不可欠だからだ。部員が担当領域に集中できるなど組織を階層化するメリットは大きいが、特にIT部門の場合はそれが大きなデメリットにもなる。
慢性的な人材不足にあるIT部門では、既存メンバーの生産性を高めるための取り組みも重要となる。事業部門が望むシステムを実現するには、彼らと積極的にコミュニケーションをとって、解決策を提案できるスキルを身に付けなければならない。だが、そうした人材育成費ですら、削減対象となっているのが実情だ。
IT部門人材の量的な不足感は慢性化し、目の前の仕事に集中する傾向が強まり、IT部門内ですらコミュニケーションを図る機会は極端に少なくなっている。隣のチームが何を担当しているかを全く知らないといった閉塞的な環境とコミュニケーションの欠如を生み出し、人材育成においても負のスパイラル効果を及ぼす。
多くの企業が実施している交流人事も、様々な問題を抱えている。IT部門に異動した人材がなかなか事業部門に復帰しないケースが出てきたという。IT部門に異動した人材が優秀だった場合、IT部門の上司が「今IT部門から異動させると、業務が滞る」と主張し、この人材を抱え込んでしまうのだ。
「これからのIT部門にどのようなプロフェッショナルが必要か」ということを、企業として明確に定義できている企業は少ない。IT活用は会社全体の課題になってきている今、「ITのことはIT部門が考えるべき」ということでよいのであろうか。
IT部門は、現行システムの改定や保守・運用、障害対応といったお守り役の業務に日々追われている。システムオーナーに対してIT目線で提言し、プロアクティブに議論することやシステムを横串で見たうえで、全社での最適化や効率向上の提案をすることは、事実上皆無となる。
IT部門は、事業部門からの要求を受けてシステム開発を行う。本来であれば両者は「パートナー」として対等な立場であるはずだが、現実には組織間のパワーバランスが崩れるケースも多い。
事業部門や経営からすると、「ITに金がかかり過ぎではないか」「IT部門の残業代が多いのはなぜ」との疑念が湧く。その結果、毎年のようにIT予算を削減するように圧力が加わることになる。実情を経営に説明しても、「ピンと来ない」と取り合ってもらえないケースも多い。
デジタルビジネスが勃興しつつある。日本企業にも、ビジネスのデジタル化は大きな経営課題。しかし、中軸的役割を期待されるIT部門は、目の前の業務に忙殺され追い込まれつつある。そこで、IT部門を変革しデジタル化の旗手に脱皮させる処方箋をまとめた書籍を緊急出版した。今回は、その中からIT部門の問題点の現状…