情報システム部門と周囲との関係は1981年以降、変わっていない。情報システム責任者は経営者をはじめ周囲の理解不足に不満を抱く。経営者、事業部門や現場、IT(情報技術)企業はシステム部門に不満を抱く。これらは理解や意思疎通の問題であり、銀の弾丸は存在しない。

 次号の日経コンピュータ(2015年11月26日号)は第900号になる。1981年に創刊してから34年をかけて900冊目にたどり着く。そこで今回と次回の本欄については趣向を変え、日経コンピュータの中核読者である情報システム部門の方々、特に情報システム責任者の過去と現在、そして未来について書いてみたい。

 899号に掲載する今回は1981年から2015年に至る過去を振り返る。900号の次回記事では34年後、2050年前後に情報システム部門がどうなっているかを想像してみることにする。

 1980年代に発行した日経コンピュータの記事と2010年以降の記事を見比べると、言うまでもないことだが登場している技術や製品は様変わりである。創刊当時にコンピュータを使っていた人は社会の中で少数であったが、今では大抵の人がスマートフォンを持ち歩いている。インターネットの発展も目覚ましい。組織の間、個人の間を結び付ける構想は1980年代から何度も喧伝されたが、それを現実のものにしたのはインターネットだった。

 だが、これだけ劇的な技術の革新があったにもかかわらず、34年間にわたって日経コンピュータが報じてきた事柄は良く言えば一貫性と普遍性があり、悪く言えば変わり映えがしない。経営や事業に資する情報システムの在り方であり、そのためのシステムを企画開発し運用保守する工夫であり、情報システム部門やIT企業に所属する方々の力量を高めるやり方だった。

 34年間を費やしても、これらの事柄を一気に改善する銀の弾丸を日経コンピュータは見つけられなかった。創刊からしばらくして始めた『動かないコンピュータ』の連載を今日まで続けているように、情報システムの利用に伴う失敗や混乱は2015年になっても収まらない。どれほど技術が進んでも、人間は技術ほどには進化しないからだ。2050年になっても本誌は銀の弾丸を発見できないだろう。