コストと納期、品質の3ポイントで、システム開発プロジェクトの成否を調査した、日経コンピュータによる2008年調査の結果を再掲する。

 3回目は、2003年調査と比較した差分だ。予算超過プロジェクトは増えたが、品質管理は向上した。人手不足が言われる今、管理手法は正しく守られているのだろうか。

 固有名詞、役職などは当時のままで掲載する。


 前回まででプロジェクトを成功させる秘訣を探った。では、プロジェクトが失敗する原因はどこに潜んでいるのか。5年前の2003年調査と比較することで、注意すべき新たなポイントが浮かび上がってきた。

 プロジェクト成功率の算出根拠である、Q(品質)、C(コスト)、D(納期)の3指標の順守率を改めて見てみよう(図1)。3指標はいずれも「当初計画を満たしていること」を順守の定義とした。

図1●品質、コスト、納期の順守率<br>5年前と比べてコストを順守する割合が減少している
図1●品質、コスト、納期の順守率
5年前と比べてコストを順守する割合が減少している
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 三つの指標のうち、この5年間で最も変化があったのはコストだ。03年調査では76.2%。今回は63.2%と13.0ポイントも目減りした。全体のプロジェクト成功率が26.7%から31.1%へと微増したことを考慮すると、この落ち込みは大きい。

 まず理由として考えられるのは、ITベンダー各社が不採算案件撲滅のための取り組みをずっと強化してきていることだ。SECの鶴保所長も「ベンダー対象のプロジェクト調査を実施しているが、コストが超過した案件はほとんどなくなった。裏を返せばそれだけユーザー企業から回収できているということでは」と指摘する。

 以前は仕様変更が起きても、ベンダーが“泣いて”超過分のコストをかぶっていた例も少なくなかった。この5年間でベンダーも厳格に料金を請求するようになった証左といえそうだ。

 コストの成功率が下がったが、品質の成功率は46.4%から51.9%へ上昇した。品質の項目は「ユーザー企業からみた品質」を測るため、出来上がったシステムの利用状況と満足度でみている。この設問の有効回答数212件のうち、110社が「計画通りのシステムが完成」し、「満足している」と答えた。