2年弱続けてきたこの連載も、今回で最終回である。最終回は、今のIT業界について、思うところを書いていきたい。

新卒社員にCOBOLを習得させて現場に投入していいのか

 日本で稼働していたシステムの中で一番使われてきたプログラミング言語は「COBOL」であろう。今でも汎用機では現役のプログラミング言語である。ただ、最新の言語でないことは確かだ。

 私の派遣SE・プログラマ時代は汎用機が主流であり、プログラミング言語として当たり前のようにCOBOLが使われていた。仕事としてもCOBOLの需要が多かったので、私も「コボラー」として現場に投入された。これに関して別に不満はなかった。

 ただ、今は時代が違う。様々なアーキテクチャー、プログラミング言語、開発手法があり、ITの世界はすさまじいまでの広がりを見せている。そんな時代なのに、希望に満ちて新卒で入社した社員にCOBOLを習得させ、売り上げを確保できるという理由だけで、汎用機がまだ動いている現場に投入している会社があるという。

 断っておくがCOBOLが悪いと言っているわけではない。私自身COBOLは大好きな言語だし、過去に習得したことは自分にとって間違いなくプラスになったと思っている。もちろんCOBOLを習得することはマイナスではない。ただ、これからITの世界で活躍する人材が習得すべきスキルは他にいくらでもあるのではないか、と思ってしまうのだ。

 COBOLを使う現場で金融系の業務知識を得て、次に生かすといった将来のキャリアプランが描かれているのであれば問題はない。先のことを考えず、目先の売り上げ欲しさに若手をCOBOLの世界に放り込んでいるならば問題である。目先の金欲しさに若者の希望を摘み取ることなりかねない。先につながらない仕事をしなくてはならないのは、とても苦しいことだ。

レガシーは日本のITを支えてきたベテランが担う

 もし読者が、そんなビジョンが見えない会社でCOBOLを嫌々やらされているなら、今すぐ辞めたほうがいい。そのまま続けても未来はたぶんその先にはない。今、IT業界には限りない可能性があるし、もしIT自体に嫌気がさしたのならばIT業界から足を洗うという選択肢もある。いいかげんなことはいえないが、未経験の分野に飛び込んでみるのもいいかもしれない。少なくとも、先が見えない暗闇でもがき続けるより余程良い。

 こんなことを書くと、「日本には汎用機のシステムがたくさん稼働しており、COBOLで書かれたアプリケーションが動いている。そこにビジネスチャンスを見いだして何が悪い」というお叱りを受けそうだ。その指摘は間違ってはいない。レガシーシステムだろうと、保守しなければシステムを稼働させ続けることはできない。そのための人員は企業組織にとっても、社会にとっても必要だ。

 ただ、それが若者でなくてもよいのではないか、と思うのだ。どうしても人手が足りないのであれば、リタイアした元COBOL技術者を再雇用すればいい。リタイアした人間を雇用することは最近の「生涯現役」時代の風潮にも合っている。一部にはそういった流れになりつつあるとは聞くが、まだまだだ。

 最新技術に近い分野は若い者が担い、レガシーは今まで日本のITを支えてきたベテランが担う。そんな仕組みが出来上がれば、もっともっと日本のIT業界が活性化するような気がしている。