写真1●NTTセキュアプラットフォーム研究所研究員の濱田浩気氏(左)、長谷川聡氏(中央)、正木彰伍氏。チーム名は「ψ沈黙のジャスティスψ」
写真1●NTTセキュアプラットフォーム研究所研究員の濱田浩気氏(左)、長谷川聡氏(中央)、正木彰伍氏。チーム名は「ψ沈黙のジャスティスψ」
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 2015年10月、匿名加工情報の技術を競う「匿名加工・再識別コンテスト」(PWS CUP)が初めて開催された。企業や大学の参加17チームのうち賞を総なめにしたのが、NTTセキュアプラットフォーム研究所の若手チームだ(写真1)。

 コンテストの狙いは、安全な匿名加工の技術の開発と評価方法を確立すること。コンテストでクラウド上の「匿名化処理プラットフォーム」を提供したニフティもノウハウの普及を狙う。

 匿名加工情報とは、2015年9月に改正された個人情報保護法に盛り込まれた、世界でも初めての法的枠組みである。従来の統計データは一人ひとりを識別しないものだが、匿名加工情報は識別できる。

 例えば、スマートフォンやIoT(Internet of Things)で集められた個人の位置情報をそのまま利用してしまうと、誰がいつどこにいるかが、第三者に分かってしまう恐れがある。これは、重大なプライバシーの侵害につながりかねない。

 しかしIoT機器の活用などでは、本人が知らない間に自動的に個人情報に相当するデータをセンサーで収集してしまうことがある。その場合、データを提供した本人にデータ利用の同意を得るのが難しい。そこで産学官で、プライバシーの保護とデータの有効活用を両立するために、匿名加工の技術が検討されている。匿名加工はビッグデータやIoTを活用するための基盤となる技術だ。

 難しいのは、どのデータにも使える汎用的な匿名加工の手法はないこと。匿名性を強める方向でデータを加工していくと、特性が失われて分析にも使えなくなる。同じデータでも、目的に応じてデータのどの部分をどう加工するかは変えざるを得ない。そのため、匿名加工には様々な専門知識が必要になる。

 こうした匿名加工の技術を研究している国内有数の人材が一堂に会して、技術を競う初めてのコンテストが「匿名加工・再識別コンテスト」(PWS CUP)である。情報処理学会のコンピュータセキュリティ研究会 (CSEC研究会)が第1回プライバシーワークショップ(PWS2015)の目玉イベントとして開催し、企業や大学から計17チームが参加した。