富士通で自治体向けのシステム開発案件のプロジェクトマネジャーを務める齋藤泰彦さん(自治体ソリューション事業本部 第2ビジネス部)は1年前まで、眠れないことに悩んでいた。仕事柄、多忙な時期は1日に3~4時間しか睡眠時間を確保できない。さらに問題なのは、寝付けないことだ。「布団に入ると、プロジェクトの課題が頭に浮かぶ。早く眠らなくてはと焦っているうちに朝になり、そのまま出社することがしばしばあった」(齋藤さん)。

 そんな状態が続いて生産性が落ち、このままではダメだと考えた齋藤さんは、睡眠を工夫することにした。睡眠に関する本を何冊も読み、自分に合った枕を購入したり、眠りを促すアロマを試したりした。そうした試行錯誤の末、齋藤さんにとって効果の高い方法にたどり着いた。それは腹式呼吸である。

 布団に入り両手をおなかの上に置いて意識を集中させ、ゆっくりと息を吐く。そして、呼吸の回数をカウントする。カウントするのは、「い~ち、に~い、さ~ん…」と頭の中で言うことで、雑念がわかないようにするためだ。それでも仕事の悩みが頭をよぎったときは、すべてがうまくいくことをイメージし「大丈夫だ、問題ない」と自分に言い聞かせるようにした。この工夫を始めてからは、布団に入って10分ほどで眠れるようになったという。

自分に合った睡眠の工夫を

 かつての齋藤さんのように、睡眠に関する悩みを持つITエンジニアは少なくない。睡眠の専門医である遠藤拓郎医師(医療法人社団 快眠会 理事長、スリープクリニック調布 院長)は、「患者の中でもITエンジニアは特に多い職種だ」と指摘する。

 それもそのはず。プロジェクトのピーク時には極端に睡眠時間が削られる。プレッシャーがのし掛かり、寝不足を解消すべき休日までも睡眠を妨げられる。しかもシステム障害が起これば、夜間でも呼び出しを受ける。

 そんな“眠れないITの現場”で、体調を維持し仕事の生産性を高めるには、齋藤さんのように自分に合った睡眠の工夫を講じることが必要だ。そこでこの特集では、ITエンジニアが実践している睡眠の工夫を、「グッスリ眠る」「スッキリ起きる」「(日中の)眠気をやり過ごす」という三つの目的に分けて紹介していく。