「働き方改革」という言葉から想起されるのは、就業時間の短縮だったり、在宅勤務だったりと、どちらかと言えば現状は「働きやすさ」に関する話題が上ることが多い。ただ、仕事のやり方、進め方を変えずに単に就業時間を短くすると、その分、生産性は下がることになる。

 生産性とはシンプルに言えば、製品やサービスなどの「付加価値」を人・モノ・金といった「投入資源」で除したものである。「生産性=付加価値÷投入資源」であり、投入資源を減らして、付加価値を維持できるのであれば生産性は上がるはずだ。だが、この付加価値を維持もしくは増大する施策は後手に回っているのが現状ではないだろうか。

 今回の教育ICT現場のリアルは、学校教育の現場ではなく、企業の教育や研修の現場においてEdTechと呼ばれる新たな教育系サービスを利用して「付加価値」を生み出した日本航空(JAL)とIDOM(旧社名はガリバーインターナショナル)の事例を紹介したい。

生産性向上には「仕事の仕組み化」が不可欠

 具体的な事例を紹介する前に、生産性向上の取り組みについて整理しておこう。業務改善コンサルティングなどに携わるスタディスト取締役COOの庄司啓太郎氏は、生産性向上には「仕事の仕組み化」が不可欠であると説く。

 仕事の仕組み化とは、生産性向上のための一連の活動のことであり、「見える化」「標準化」「マニュアル化」「ツール化」の四つのステップに分けられる。そして最終的に自動化/半自動化できる業務、自動化できない業務を切り分ける。

 自動化/半自動化できる業務はITを適用して省力化、効率化し、生産性における「投入資源」を減らしていく。一方、その分の浮いた時間で、自動化できない業務に、これまで以上の時間や人手が割けるようになる。つまり「付加価値」がこれまでより多く生み出されることになる。

 この自動化できる/できない業務を切り分ける上で最初にやらなければならないことが、業務の「見える化」だ。この段階で業務を三つのタイプに分ける。三つのタイプとは「A:感覚型業務」「B:選択型業務」「C:単純型業務」である(写真1)。

写真1●業務の3タイプ。あらゆる業務は「感覚型」「選択型」「単純型」のいずれかに分けられる
写真1●業務の3タイプ。あらゆる業務は「感覚型」「選択型」「単純型」のいずれかに分けられる
(出所:書籍「結果が出る仕事の『仕組み化』」=日経BP発行、株式会社スタディスト 庄司啓太郎著=)
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 Aは、長年の経験や知識を基に、瞬間的かつ感覚的に高度な判断を必要とするクリエイティブな業務、Bはいくつかの限られた選択肢の中から最適なものを選ぶ業務、Cは誰がやっても同じであるべき業務である。

 この中でBとCは標準化し、マニュアル化やツール化ができる業務であり、自動化、半自動化の対象となる。一方、Aは無理に標準化、マニュアル化をせずに、その業務を伝える際は、例えば事例化するなどしてやり方を共有する。庄司氏がこれまでコンサルティングをしてきた中で、このAとB+Cの比率は、「どのような業種の企業でもおおむね2:8になる」という。