米国で2004年、大学生向けに公開されたSNSの「Facebook」。2006年に一般へ開放、2008年には日本語版が公開と、その範囲を広げてきた。そして今年8月末、運営会社である米フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEO(最高経営責任者)は、Facebookに1日にアクセスした利用者数が初めて10億人を超えたと自身のFacebookで発表した(写真1)。地球上の約7人に1人が同日にFacebookを利用した計算になる。連載の第3回は国境を越えた地球規模のネットワークとなったFacebookを取り上げ、その特徴や最新状況、今後のビジョンを解説する。本記事の執筆に当たっては、Facebook Japanに監修を依頼した。

Facebookの特徴

 広く知られるように、Facebookの最大の特徴は実名制だ。インターネットは、もともと匿名性が高く、ニックネームなどを使い個人が特定できないサービスが一般的だった。今でもmixiやツイッターはハンドルネーム、つまり匿名での登録が可能だ。

写真1●マーク・ザッカーバーグCEOは、10億人突破を自らのFacebookページで伝えた
写真1●マーク・ザッカーバーグCEOは、10億人突破を自らのFacebookページで伝えた
出所:米フェイスブック
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 原則として実名であるFacebookは「実生活でつながっている人たちとつながれるサービス」だ。実生活と地続きの現実的な関係を、インターネット上で作れる。こうした観点のサービスは今まであるようでなかった。ネット上に実名を出すことに抵抗を感じる利用者も依然としているかもしれないが、逆に実名制だから安心して利用できるという考え方もできる。企業のFacebookページを作る場合でも、まずは実際に運営する個人アカウントの登録が必要になる。この実名制がFacebookの価値を決定づけている。

 2008年、Facebookが日本へ上陸した際には、来日したザッカーバーグCEO自身が「実名でこそ利用者に利点がある」と力説した(関連記事:http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20080519/302685/)。日本でなじみのなかった種類のサービスだけに、当時はFacebookに対して懐疑的な見方もなかったわけではないが、その後の広がりはご存じの通りである。利用者数は2015年6月末時点で2400万人に達した。

「世界をオープンに」

 Facebookのミッションはとてもシンプルだ。それは「世界をよりオープンでつながったものにする」というものである。根底にあるのは、「(資源は有限だが)情報は共有できる」という想いで、情報をより多くの人がアクセスできるようにすることで、より良い判断を下すことにつながる、というものだ。

 Facebookはそのミッションに基づき、さまざまな事業やサービスを展開している。ミッションがシンプルだからこそ、その価値を深めたり、広げたりできると言える。

 2012年の初め、マーク・ザッカーバーグCEOは、社内外に向けて「Facebookはモバイル ファーストカンパニーになる」と宣言した。2004年の創業時はデスクトップ向けとして始まったFacebookは、携帯電話やスマートフォンといったモバイルの急激な普及に対応すべく、現在はモバイルを中心としたサービスを充実させているという。