ヨーロッパでは、イギリス政府が公式文書形式としてLibreOfficeの標準ファイル形式である「Open Document Format(ODF)」を採用するなど、LibreOfficeやオープンドキュメントに順風が吹いているところがありました。これは文化的な面もあるでしょうが、反「アメリカ一国主義」として、米Microsoftや米Appleといった米国企業に依存すべきでないという点も大きいのかと思います。「移行しました」というだけのトークではなく、いかに安定して運営するかというステージに変わったという印象を受けました。

 そうしたヨーロッパの事例として、Jan-Marek Glogowski氏が「LibreOffice in the City of Munich」としてミュンヘン市の取り組みについて発表しました。ミュンヘン市は、冒頭の基調講演でも触れた通り、「The Document Foundation」(ドキュメント財団;TDF)のAdvisory Boardでもあります。

 ミュンヘン市は10年という長期間の取り組みでLinux完全移行を進め、2013年に完了しましたが、2015年になってややネガティブな論調のニュースが聞こえてきてもいます。しかし、Ubuntuをベースに市が独自で作ったディストリビューションである「LiMux」は継続的にメンテナンスされており、最初の取り組みで採用した「OpenOffice.org 3.2.1」から、現行の「LibreOffice 4.1.2」への移行に際して、十分なテストと独自のパッチ開発、そしてそれをマスターにも提供するという取り組みについて話されていました(写真1)。

写真1●ミュンヘン市が発表したスライドより。独自の不具合修正を多数行ない、開発版にフィードバックしていることをアピール。
写真1●ミュンヘン市が発表したスライドより。独自の不具合修正を多数行ない、開発版にフィードバックしていることをアピール。
(撮影:榎 真治)
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 現在は2016年第2四半期に予定されている「LibreOffice 5.0」へのアップデートを目指して作業を行っているとのことです。

 現在のLibreOfficeのコミュニティ版はサポート寿命が1年弱であり、Collaboraなどが提供している長期サポート版(Long Term Support; LTS)で3年サポートなのですが、ミュンヘン市のチームは4.1にパッチを当てて独自に長期運用しています。これを共有すればコミュニティ版LTSというのが作成できるのではないか、賛同者を求む、というアピールもありました。