アイデア発想のテクニックの1つにアナロジー(類比、類推)の活用がある。このアナロジーを活用した体系的なアイデア発想法の代表に「シネティクス」や「NM法」がある。今回はこれらの技法を通じてアナロジーがアイデア発想に強力に役立つ点を明らかにしたい。

アナロジーがもつ強力なパワー

 私たちは見慣れないものや初めての問題に遭遇すると、どう取り扱ってよいかわからないため戸惑うものだ。このようなときに私たちは、過去の経験に照らして、見慣れたものでよく似ているものや前に解いたよく似た問題、つまり類似したものを想起して、見慣れないものや初めての問題を慣れ親しんだものに転換するよう努めるものだ。これをアナロジーと呼ぶ。中でもこのようなアナロジーを「異質馴化」と呼ぶ。

 この逆で、あまりにも見慣れたものや繰り返して解いている問題から、新しい発想を呼び起こすのは難しい。その場合、見慣れたものを全く異質のものに置き換えることで、思いも寄らない特徴や解決策を見出せることがある。これもアナロジーの一種で、「馴質異化」と呼ぶ。

 では、アナロジーがアイデア発想に役立つ一例を紹介しよう。格好の題材にギリシヤの数学者アルキメデスのエピソードがある。

 あるときアルキメデスは、シチリアの王から、「この王冠が確かに純金でできているかどうか調べよ」と命じられた。しかしなかなか妙案が浮かばない。気分転換に風呂につかっていたアルキメデスは、浴槽からこぼれ落ちる湯を見て、突如アイデアを思いつく。

 アルキメデスは、水を満たした容器に王冠と、金細工師に与えたのと同量の金とを、交互に入れ、あふれ出した水の量を量ることで、王冠が純金かどうか調べられると考えたのだ。解法を発見したアルキメデスは、「ユリイカ!(eureka/われ発見せり)」と叫びながら、シラクサの街を裸で駆け回ったというのは、あまりにも有名な話だ。