この連載では、仕事で勝てる「ビジネス文章力」をテーマにしている。良いビジネス文章を書きたいなら、単に礼儀作法を知っているだけではダメである。ビジネススキルを向上させること、これが良いビジネス文章を書くための条件である。

 当文章治療室では、筆者がこれまで実務現場で経験してきたケースを使い、さまざまな文章力不足を「病」にたとえ、治療というコンセプトで、スキルアップの具体的方法について紹介する。

 この連載は読者より「内容が簡単」「新人向けレベル」「参考にならない」などの意見がある。確かに読めば分かる簡単な内容であるが、多くの人は簡単に書けないのが実情である。読めても書けないのが、ビジネス文章の難しいところなのだ。

 「ここで紹介するレベルの文章をスラスラ書けること」「それを部下や後輩に正しく教えることができること」これが本連載の目指すところである。読めるから書けるだろうと考えずトレーニングを続けることが、ビジネス力の向上につながる。

 今回は「分析切り口大雑把症」の治療である。仕事では上司、上長に仕事上の課題の解決策を問われることが多い。この場合に必要なのは、どういう切り口で現状を分析するかである。

 重要なのは、自分がこれでよいと思う分析の考え方(分析の切り口)と上司や上長の求める切り口のレベルが合っているかを考えることだ。報告者の考えた分析の切り口が上司や上長の視点では甘い切り口であることも多い。

 課題の分析者は自分の経験だけでなく、社内外の有識者の知見や他のさまざまな情報を収集し、検討をして、上司や上長が適切と考える「分析の切り口」で現状の課題を分析し、その解決策を報告する必要があるのだ。

 課題を分析して解決する報告では、このようなことが欠かせないのだが、これができていない文章が多い。このような文章は上司の不満につながり、仕事の評価も低くなる。今日の患者さんも、そういう人だった。