この連載では、仕事で勝てる「ビジネス文章力」をテーマにしている。良いビジネス文章を書きたいなら、単に礼儀作法を知っているだけではダメである。ビジネススキルを向上させること、これが良いビジネス文章を書くための条件である。

 当文章治療課では、筆者がこれまで実務現場で経験してきたケースを使い、さまざまな文章力不足を「病」にたとえ、治療というコンセプトで、スキルアップの具体的方法について紹介する。

 この連載には「内容が簡単すぎる」「新人向けレベル」「分かり切った内容で参考にならない」などの意見もある。しかし筆者の25年以上のビジネス経験では、ここで紹介するレベルの文章も書けない中堅社員、管理職が多かった。

 ここで紹介するような「基本レベルの文章を書けること」、「それを部下や後輩に正しく教えることができること」──これが本連載の目指すところである。簡単だと軽く考えないことが、ビジネス力の向上につながる。

 今回は「上司向け課題説明虚弱」の治療である。役員や部長といった上司、上長に、仕事上の課題(プロジェクト課題)とその対策を説明するケースが出てくる。報告する側はプロジェクト課題を分析し、上司の視点を考慮し、適切な内容を説明することが求められる。

 ポイントは、プロジェクトの真の課題と実効性のある対策を見つけて報告することである。報告者が重要な課題と思っていることは、上司の視点では小さい課題であり、もっと大きな課題を報告すべきであるのに、それに気づいていない報告者が多い。

 報告者は自分の過去の経験だけでなく、有識者の知見や他のさまざまな情報を収集し、プロジェクトの課題を漏らすことなく洗い出し、上司に真の課題と対策を報告する必要があるのだ。

 課題とその対策の上司向け報告では、このようなことが欠かせない。だが、これができていない文章が多い。このような文章は上司の不満につながり、仕事の評価も低くなる。今日の患者さんも、そういう人だった。