この連載では、仕事で勝てる「ビジネス文章力」をテーマにしている。良いビジネス文章を書きたいなら、単に礼儀作法を知っているだけではダメである。ビジネススキルを向上させること、これが良いビジネス文章を書くための条件である。

 筆者は、「文章は忠実に人の能力を写す鏡」だと考えている。文章の不備は書いた人間の不備、文章がダメなら書いた人間の能力も不十分。文章が悪いのではない、人間が悪いということだ。

 当文章治療室では、筆者がこれまで実務現場で経験してきたケースを使い、さまざまな文章力不足を「病」にたとえ、治療というコンセプトで、スキルアップの具体的方法について紹介する。

 今回は「納得してもらえない症候群」の治療である。仕事では自分の考えを他人に納得してもらう必要がある。他人に納得してもらえないと仕事が進まないからである。だから、人に話をして納得してもらうことは、仕事を成功させる上で重要な仕事である。

 人に自分の考えを説明し納得してもらうためには、理由や客観的な数字、専門家の意見が必要である。人に納得してもらう文章では、これらの「納得してもらうための」要素が欠かせないのである。

 しかし、これが分かっていない人も多い。このような人は雰囲気で説明してしまい、客観的な数字など納得してもらえる根拠を示せず、仕事で他人を納得させることができない。今日の患者さんも、そういう人だった。