この連載では、仕事で勝てる「ビジネス文章力」をテーマにしている。良いビジネス文章を書きたいなら、単に礼儀作法を知っているだけではダメである。ビジネススキルを向上させること、これが良いビジネス文章を書くための条件である。

 筆者は、「文章は忠実に人の能力を写す鏡」だと考えている。文章の不備は書いた人間の不備、文章がダメなら書いた人間の能力も不十分。文章が悪いのではない、人間が悪いということだ。

 当文章治療室では、筆者がこれまで実務現場で経験してきたケースを使い、さまざまな文章力不足を「病」にたとえ、治療というコンセプトで、スキルアップの具体的方法について紹介する。

 今回は「文章添削疾患」の治療である。仕事では他人の文章を読んで内容をチェックし、間違いを指摘する必要がある。特に能力面で課題のある部下や後輩の文章は正しく添削することが上司や先輩の重要な仕事である。

 部下の文章を添削し、正しい文章にすることで、部下は上司の能力に納得し、信頼感が増す。それだけでなく、良い文章添削は、上司の持つ仕事上の能力を文章を通じて部下に伝播させることができるのである。

 このように、部下の文章を見て真の課題を発見し、正しい方向に添削することが必要である。しかし、部下の文章を表面的にしか添削できない人がいる。今日の患者さんも、そういう人だった。