この連載では、仕事で勝てる「ビジネス文章力」をテーマにしている。良いビジネス文章を書きたいなら、単に礼儀作法を知っているだけではダメである。ビジネススキルを向上させること、これが良いビジネス文章を書くための条件である。

 筆者は「文章は忠実に人の能力を写す鏡」だと考えている。文章の不備は書いた人間の不備、文章がダメなら書いた人間の能力も不十分。文章が悪いのではない、人間が悪いということだ。

 当文章治療室では、筆者がこれまで実務現場で経験してきたケースを使い、さまざまな文章力不足を「病」にたとえ、治療というコンセプトで、スキルアップの具体的方法について紹介する。

 今回は「部門間利害調整不全」の治療である。仕事では、利害が衝突して思い通りに進行しなくなることが多い。特に、営業部門と開発部門など異なる部門の関係では、一方の利益が他方にとってリスクになる可能性があるので、適切に調整する必要がある。

 部門間で利害が対立する局面においては、それぞれの主張を単純に聞いているだけでは、一方は「やることが正義」「やることが悪」のように矛盾する状況になりかねない。たとえば、営業部門はどのような顧客要望でも実現すべき、と主張するが、開発部門はなんでもかんでもやるべきではない、と主張するなどだ。

 何をやって、何をやらないのかを決める……。このような「利害調整」は仕事をする上で欠かせない能力である。しかし、適切に利害が調整できない人がいる。今日の患者さんも、そういう人だった。