ここ最近、BtoBマーケティングの周辺で目にする機会が増えてきた「アカウント・ベースド・マーケティング(Account Based Marketing、ABM)」。今後のBtoBマーケティングの主流となる手法と期待されているが、従来の手法と何が違うのか分かりずらい。本特集では、ABMの概要と、ABMの導入で一歩先を行く海外の動向を俯瞰する。

 第4回はABMで重要な意味を持つ、顧客の満足度を高めさらなる購買に結びつける役割を担う「デジタルコンテンツ」について解説する。


 前回、米国から2年遅れで利用が進んでいると言われる、ドイツや英国を中心とした欧州のBtoBデジタルマーケティングの状況についてまとめました。米国で「アカウントベースドマーケティング(Account Based Marketing)」と呼ばれ、売り上げ拡大などを狙って、既存顧客が対象の「アンダーファネル」(従来のリード創出の「マーケティングファネル」の下にある、売り上げ拡大のために下方に向かって開いたファネル)に重点を置くマーケティング施策です。

 米国流の新規リード獲得策だけではなく、一度は取引があった顧客を対象とした満足度向上や契約の継続、売り上げの向上(アップセル)、そして別の商材の売り込み(クロスセル)や、既存新規つまり他部署との商談のための方策も重視しているわけです。フォレスターリサーチのVice Presidentで Research DirectorのPeter O’Neill氏は、「インバウンドマーケティングや新規リードの獲得にとどまりがちな米国と比べて、進んだ対応と見てもよさそうだ」と評していることは前回書きました。

 では、BtoB商材では、具体的にどんなことを考えて行けばいいのかを、少し考えてみたいと思います。

契約変更の兆候をとらえる

 まず、契約の継続について考えてみましょう。BtoB商材は取引額も小さくないので、契約を継続してもらうことは重要です。

 既に取引があるからと言って、毎年契約が継続されるとは限りません。同等の性能を持つ商品や、より良く、より安いサービスを探して、契約を他社に取られることも少なくないでしょう。

 契約先変更の兆候も、Webサイトへの来訪ぶりをウオッチすることで把握できます。新規顧客候補が、Webサイトを閲覧して水面下で一次選定を進めているように、契約乗り換えの際にもWebサイトの情報を利用することが多いからです。

 契約更改前の時期には、これまで利用していた商材について、価格表やスペック情報などを比較して、他社への乗り換えを検討することがあります。こういった動きをWebページへのアクセス履歴などからとらえ、担当営業が顧客を訪問するなどの対策を取れれば、契約継続の可能性を高められるでしょう。

 ただし、既存契約商材の情報閲覧行動が、契約打ち切りの危機につながるとはいえないこともあります。より高い性能の新機種などの導入を検討しているのかもしれません。その場合も、顧客の訪問はチャンスをとらえるきっかけになるでしょう。より高機能な新製品を薦めすることでアップセルにつながる可能性があります。