ここ最近、BtoBマーケティングの周辺で目にする機会が増えてきた「アカウント・ベースド・マーケティング(Account Based Marketing、ABM)」。今後のBtoBマーケティングの主流となる手法と期待されているが、従来の手法と何が違うのか分かりずらい。本特集では、ABMの概要と、ABMの導入で一歩先を行く海外の動向を俯瞰する。
第1回はアカウント・ベースド・マーケティングの概要と、マーケティング部門によるアカウント選定の三つのポイントのうち一つめ「購買力の定義」を解説する。
外資系IT企業のマーケティング担当という仕事柄、筆者は海外のマーケターとのやり取りが多くあります。最近、海外のマーケティングチームから「Account Based Marketing(ABM)」という言葉を耳にすることが増えました。
Account Based Marketingとは?
ABMとは、これまで「市場」という大きな括りを対象としていたマーケティング活動を「アカウント」というより具体的な対象に括り直し、その「アカウント」の観点からマーケティング活動を立案・実行するというものです。
ABMの特徴はその名に含まれる「アカウント」を明確化することから始まります。アカウントとは「市場」でも「個人」でもなく「企業・団体」という組織を指します。BtoBのマーケティング活動は、個人の購買ではなく組織による購買をターゲットとしています。ABMはその本来必要な取り組みに改めて名前を付けたともいえます。
ではなぜ「アカウント」の明確化が必要なのでしょうか。
米国でABMを提唱しているDemandbaseでは
- Web来訪者の82%はポテンシャルカスタマーではない
- Web来訪者の直帰率(Bounce Rate)は60%にのぼる
- マーケティングが提供するリードの50%は営業に無視される
実際には扱う商材によって異なりますが、多くのBtoBの商材は「対象企業によって購買力の格差が大きい」「売るための販売チャネルや営業リソースが限定的」という傾向にあるためです。
具体的には、上位十数%の顧客から売り上げ全体の80%が生み出されるような「売上遍在性」を持つ企業が、ABMを始めるのに適していると考えられます。限られた顧客に限られた販売リソース(営業・マーケティング)を投下し、最大限の効果を上げるための手法がABMです。それ故、1社当たりの売上高に変化が少ない企業には適していないといえるでしょう。
こうした考えに基づいて、ABMではマーケティング部門がターゲットを選定し、それに応じたマーケティング活動を実施、結果を計測することが必要とされます。