東京・汐留の大通りを挟み、ほぼ向き合う形でそそり立つ「パナソニック東京汐留ビル」と「電通本社ビル」。異業種の2社がタッグを組み、プロスポーツのテレビ中継に革命を起こそうとしている。
パナソニックには、長年培ってきた映像技術やセンサーなどがある。一方電通は、リッチな広告表現のノウハウを抱える。互いの強みを持ち寄る。狙いはもちろん、2020年の東京五輪・パラリンピック。世界の誰もが観たことがない斬新な映像コンテンツで消費者を釘付けにしようと、急ピッチで開発を進めている。
「重畳」と呼ばれる映像表現に挑戦
「スポーツ観戦をテクノロジーの力で分かりやすくすれば、もっとテレビ中継は楽しくなる。そうすれば、結果としてスポーツ市場でもっと大きなビジネスの姿も描けるはず。そう考えた」。パナソニック・東京オリンピック・パラリンピック推進本部の門田賢治主幹は、電通と共同推進するプロジェクトの意義をこう語る。
両社は2月、「プレミアム・スポーツコンテンツ」を活用した事業開発で業務提携している。パナソニックは五輪の最高位スポンサー。一方の電通は、2018年から24年までのアジアでの五輪放送権を取得するなど、長年五輪を含む多くのスポーツイベントに携わってきた実績がある。その2社が今回タッグを組んだ。
ハイテクを駆使したスポーツ中継を、なんとしてでも2020年までに完成させたい。パナソニックと電通はこう意気込む。既に実現したいコンテンツのイメージのいくつかは既に固まっている。
例えば水泳。現状、多くの視聴者は、試合中少なからずフラストレーションを感じていると両社は考えている。「試合直前に行われる選手紹介のときに気になる選手を発見したとする。しかし実際に泳ぎ始めると、誰がどこにいるのかテレビ画面では分からないまま試合が終わってしまう」(門田主幹と同じ部署で五輪を担当する坂内達司主幹)
どの選手も同じような水着やスイムキャップだし、しかも水しぶきの中を選手は進む。判別の頼りになるのはコース番号ぐらいだが、カメラアングルは頻繁に切り替わるので、すぐにお目当ての選手を見失ってしまう。良くある話だ。
パナソニックと電通は、選手一人ひとりの泳ぐ位置に、国旗や選手名などをCG(コンピューターグラフィックス)で重ね合わせ表示し、泳ぎに合わせて追尾させるような表現方法を検討している。いわゆる「重畳」と呼ばれる映像表現だ。これなら常に選手を目で追える。