写真●右から、日本ゲートボール連合の野上順・事業部業務課兼普及課課長、鈴木哲治事業部部長、データスタジアムの新規事業推進部の池田智史氏
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写真●右から、日本ゲートボール連合の野上順・事業部業務課兼普及課課長、鈴木哲治事業部部長、データスタジアムの新規事業推進部の池田智史氏

 競技ゲートボールの世界がデータ革命に揺れている。「シニア層のレクレーション」のイメージが強いスポーツだが、国内愛好家100万人の多くが競技としてゲートボールに向きあうことはあまり知られていない。4年に1度の世界選手権には20近いの国や地域からトッププレーヤーが一堂に会し、腕比べで大いに盛り上がる。

 最近は競技熱が高まり、重要になりつつあるのが戦術だ。こうした動きを受け、国内のゲートボール界を統括する日本ゲートボール連合は他国に先駆けてデータに着目し、勝率を高めようと躍起になっている。野球やサッカーでは当たり前つつあるデータ分析が裾野を広げ、メジャー以外のプロスポーツの強化にも貢献し始めた。

中国人プレーヤーの躍進に危機感

 「発祥国にもかかわらず、日本は2010年の世界選手権で中国にこてんぱんに負けてしまった。それが全ての始まりだった」。日本ゲートボール連合の鈴木哲治事業部部長は、データ分析に興味を示したきっかけをこう明かす。

 戦後まもなく、遊び道具がない子どもたちが手軽に楽しめるスポーツとして考案されたゲートボール。手軽で体力への負担が少ないことから、想定と違ってシニア層から熱い支持を得て、その後一気に普及した。日系人コミュニティなどを通じて海外にも輸出され、今では愛好家は世界で1000万人に上るとされる。

写真●映像を使ってゲートボール競技の大会の試合内容を事細かに記録する新システムを開発した
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写真●映像を使ってゲートボール競技の大会の試合内容を事細かに記録する新システムを開発した

 このうち約半数の550万人を占めるのが中国人プレーヤーだ。政府の支援もあり競技人口も急増。メキメキと腕を上げ、競技の世界で存在感を増しつつある。「雨でボールが転がりにくいコンディションでも、5メートル先のゲートを着実にものにする選手も少なくない」(野上順・事業部業務課兼普及課課長)。2010年に続き、2014年の世界選手権でも優勝したのは中国チームだった。

 事態打開のため、日本ゲートボール連合が頼ろうと考えたのがデータ分析だ。鈴木部長は「そもそも理想的なプレーヤー像とはどんな姿なのか。そのうえで選手強化のために何をすべきなのか。判断するためには手掛かりとなるデータが必要だった」と振り返る。