「KDDI Business ID」の開発プロジェクトで初のアジャイル開発が成功したあと、KDDIのクラウドサービス担当チームが次に挑んだのは、社内での横展開だった。2番手として選ばれたのが、クラウド上で稼働させている仮想サーバーやネットワークなどの構成を可視化する機能の開発プロジェクトだ。

 プロジェクトを主導したのは、プラットフォーム開発本部 クラウドサービス開発部 開発4グループ マネージャーの北条裕樹氏。当初、従来通りウォーターフォール型で開発を進めるつもりだった。そこに、ソリューション事業企画本部 クラウドサービス企画部長の藤井彰人氏から、アジャイルを採用するようにと指示があった。2014年の10月ごろのことだ。

 「いつまでに何を作るべきかはっきりしているし、リスクもそれほど感じていなかった。正直、ウォーターフォールでいいんじゃないのか、と思っていた」(北条氏)。割り切れない思いを感じながら、アジャイル型に変更することになった。

 KDDI Business IDの開発チームがアジャイルに挑んでいる様子はこれまでも遠目に見ていたが、「こいつら何をやっているんだ? という感じだった。何をどう進めていいか、さっぱり分からなかった」(北条氏)。そこで、KDDI Business IDのメンバーにヒアリングをすることから開始。アジャイルの基本から始まり、留意すべきポイントや、失敗を防ぐために必要なノウハウなどについて教えを受けた。さらに、KDDI Business IDでアジャイルの経験を積んだ開発者数人に、北条氏のプロジェクトにも加わってもらった。

結果に至るまでのプロセスを楽しむ

 実際にプロジェクトが動き出すと、「間もなく、これは良いなと思い始めた」(北条氏)。大きかったのが、チームの雰囲気が変わったことだ。北条氏は元々、自社の社員とSI事業者の社員が一つのチームとして一体感を持って開発できるようにしたいと考えていたが、従来の請負契約の関係では思うようにいかなかった。アジャイル開発で準委任契約に変わったことで、これが実現できた。