いよいよ、KDDIでアジャイル開発がスタートした。方法論は、国内でも採用が広がっている「スクラム」に決まった。専任のチームも編成した。これまでは企画/開発/運用と役割ごとに組織が分かれていたが、全員で一つのチームを構成する形に変えた。

 メンバーの意気込みは強かった。従来のウォーターフォール型開発の限界を打ち破れるのではないかという期待があったためだ。だが一方で、不安も大きかった。

 同社はアジャイル開発の採用と同時に、プログラムの内製化を決断した。従来はコーディングは外部のSI事業者に委託する形を採っていたが、今後は社内の開発メンバーも最初からコーディングにかかわることになる。「何もかも初めてのことだらけで、正直不安があった」(プラットフォーム開発本部 クラウドサービス開発部 開発第4グループ 課長補佐 中嶋優氏)。

 企画担当者の仕事も一変した。開発担当者を開発作業に専念させるために、これまで開発チームがこなしていた仕事の一部を担うことになった。開発したシステムを運用部門に引き継ぐ作業などが一例だ。「自分の仕事が倍くらい増えたような感じがした。周りをうまく巻き込まないと、立ちゆかなくなるかもしれないと思っていた」。(ソリューション事業企画本部 クラウドサービス企画部 企画4グループ マネージャー 山田高氏)。

ペアプログラミングでコーディングを習得

写真1●二人ひと組でプログラミング
写真1●二人ひと組でプログラミング
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 アジャイル開発を進める下準備として、外部講師を招いて3日間程度の合宿を2回実施した。開発担当者は、開発環境の構築、開発ツールの使い方といった内容を習得。企画担当者も、開発計画の策定などの内容を学んだ。

 ただ「プログラミングの未経験者が、数日間の合宿をした程度で商用のソースコードを書けるようになるわけではない」(プラットフォーム開発本部 クラウドサービス開発部 開発4グループリーダー 荒本実氏)。実践的なスキルは、二人ひと組でコーディングをする「ペアプログラミング」を通じて身に付けていった。SI事業者にKDDIに常駐してもらい、KDDIの社員とSI事業者の社員がペアになって作業を進めた(写真1)。