みんなの「常識」を取り入れる

 次に3次元表現やビジュアル要素を活用して,伝えたい内容をより強調する,説得力のある図を作る方法を考えてみよう。例題は「単に稟議りんぎ書を電子化して回覧するだけでは,十分な効果は見込めない」というテーマ。紙の稟議書回覧にムダが多いことを示すために,さまざまなバリエーションに展開してみる。

 説得力のある図を作る際には,多くの人がテーマ内容からイメージすると思われることを,表現にうまく取り入れられるかどうかが重要なポイントになる。稟議書と聞いて思い浮かべるイメージは「印鑑」だろう。また稟議回覧は発議者から最終決裁者(社長など)に達するまでに,かなりの段階を経る。さらに多くの人が目を通すわりには,内容をじっくりと読み責任を持って印鑑を押す人が少ない,というネガティブなイメージもある。こうした稟議書の「常識」を図に取り込んでいく。

 図28(a)は,稟議書に関わる人々を図で示し,印影を1つ配置したものだ。赤い印影を取り入れたが,まだまだシンプルなものである。これを発展させ,図28(b)のように印鑑のイラストの中に文字を配置するようなアイデアが出てくれば,あとの展開は容易だ。稟議書は最終的には発議者に戻ってくる場合もあり,ぐるりと一周する表現も考えられる(図28(c))。決裁者の「地位」から考えると,図28(d)のように下から上へと印影が積み重なっていく立体的な動きも表現できる。

(a)元の図解
(a)元の図解
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(b)印鑑のイラストを使った図解
(b)印鑑のイラストを使った図解
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(c)印影を使った図解その1
(c)印影を使った図解その1
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(d)印影を使った図解その2
(d)印影を使った図解その2
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図28●印鑑や印影で稟議書のイメージを伝える