一生懸命に考えて,様々な情報を盛り込み,顧客にとってベストと思われるソリューションを提案する図を作った。ところが見た人は「一体何が書いてあるのか」,「どう理解したらいいのか」と頭を悩ませてしまう――。こんな事態は何としても避けたいところだ。直感的かつ自然に理解してもらえるような図を作るには,どうすればいいのだろうか。

 図を描き慣れているITコンサルタントやITエンジニア,図解の研究者やプロのデザイナーに取材すると,いくつかの共通点があることが分かった。図を作成する前に考慮するべきポイントが2つ,作成段階で注意すべきポイントが3つである。このうちのいくつかは,読者も無意識に実践しているはずだ。まずこの5つの鉄則(図1)を紹介する。

図1●分かりやすい図を作るための5つの鉄則
図1●分かりやすい図を作るための5つの鉄則
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 これらの鉄則をふまえた上で,さらに分かりやすく内容を効果的に訴える応用的なテクニックがある。すなわち,色の利用と,3次元的な表現やビジュアル要素の活用だ。第2回以降で,さまざまな情報を図で伝える「インフォグラフィックス」の国内第一人者,チューブグラフィックスの木村博之代表取締役が,色の基本原理と効果的な色遣いの方法,3次元的な表現とビジュアル要素活用のテクニックを解説する。

鉄則1:図を作る目的と伝える相手を明確にせよ

 メディアハウスA&Sの飯田英明取締役は,「図を作る大前提として,図によって何を伝えようとしているのかをはっきりとさせておくべきだ」と言う。同時に,誰に見せる図なのかも明確に意識する必要があると語る。例えばエンジニアが相手なのか,それとも技術に詳しくない経営層に見てもらうのか。「相手の立場や知識によって訴求ポイントは違ってくるし,使う用語もそれに合わせて変えた方がいい」(同)。

 電通フューズのITコンサルタント,田口仁ストラテジー・シニアコンサルタントも,「図などの資料を作るときは,常に見せる相手を意識している」と同意見だ。図を作り始める前には,どんな場面で誰に何を伝えるための図なのかを明確に意識することが大切。これをあいまいにしたままでは,決して分かりやすい図はできない。